四時間目の終了のチャイムが校内に流れた。四時間目の教科は歴史で、教卓の上に立っていた浦部はチャイムを聞くと、疲れた表情を顔に浮かべ欠伸をかく。
「ほら、立て」
面倒くさそうに授業をしていた彼女にとって、この昼休みの時間は俺たちと同じで癒しの時間なのだろう。教卓に立って仕事をしなくても良いのだから。
教師らしくない彼女の行動こそ、彼女の行動なのだとクラスの生徒からは認知されている。それを分かってはいながらも、教師らしい行動をしようとしない。『疲れた』や『ダルい』などネガティヴな発言を今日もみんなの前で堂々と言っていた。
まぁ、そんな教師だから、俺たちも気を抜いて授業を受けていられる。
ちなみに俺は授業など聞いてなどいないが……。
「礼」
みんなは彼女に向かって頭を下げる。もちろん、そんな深々とではなく、軽くなんのありがたみも感じずに。『ありがとうございました』の掛け声に心など籠っているわけがない。
授業を受けるということを日常化してしまったから、そのようなことが起こる。皆、授業を受けたいと思って来ているわけではないし、そんな志を持っている生徒など本当にごく少数。
ありがたみなどを感じなくなってしまうのは、授業を受けるということを日常化してしまっているのだからだと俺はそう思う。
そう思い、自分が学校という存在を嫌悪していることを若干だが正当化した。まぁ、そんなことを言ったところで、変わるわけはないのだが。
俺は鞄の中から弁当を取り出そうとした。その時、俺の視線はやっぱりあの怪しい瓶に向いてしまった。十センチほどの小さな瓶に入った怪しい液体。
「いい?この液体を今日の昼休みに飲むの。効果は推測だけど十五分程度。それで、エロ漫画的展開に持ち込むの。分かった?」
弥生に言われたことを思い出し、俺は小さな瓶を手に取った。
さぁ、どうしようか。誰を狙おうか。
と、俺は犯罪者になる準備をしていたら、後ろからチョンチョンと肩を軽くつつかれた。
「おい、どうした。そんな変態的な目で女子たちを見て」
「うわわぁッ‼︎ビビったぁ」
俺は突然のことで声を出してしまった。
そこにいたのは倉本である。俺は倉本が目の前にいると知ると、すぐさまに瓶を鞄の中にしまった。
「ど、どうした?」
「ん?いや、お前が犯罪を犯しそうなほど、いやらしい目をしていたからな。ついに覚悟を決めたかと思っただけだ」
「覚悟決めたって何?元々、犯罪したいわけじゃないんだけど」
「元々?じゃぁ、今は犯罪をしたいってことなのかッ⁉︎」
自ら墓穴を掘ってしまった。本当は否定したいが、今回ばかりはそれが事実なので否定など出来ない。
まぁ、嘘を使ってしまえばどうとでもなるが……。
「そんなわけねーだろ」
倉本は俺の言葉に半信半疑でありながらも、いやらしい笑みを浮かべる。何かを企んでいる目である。
彼女は瓶のことを知らないようだが、俺が隠し事をしているだろうと勘付いた。それでも、それを俺に言うことなく、ニタニタと笑う。
すると、彼女は去り際にまるで俺に聞かせるような独り言を呟いた。
「まぁ、私たち女子はGHBの部室で楽しく昼食をとろう」
彼女はそう言うと、俺の方を向いて、またいやらしい笑みを浮かべた。