「……はぁ、マジかよ」
俺は頭を抱え、深いため息を吐く。それもそのはず、この薬をを使う羽目になったのも、全部彼女のせいなのだから。
彼女は弥生に薬の被験者になることを頼まれて、彼女はそれを断った。そして、彼女は自分の代わりにと弥生に勧めたのが俺なのだ。
いや、まぁ、彼女のせいと言ってしまえばそれは少し違う。元々は弥生がこんな薬を一高校生である俺たちな頼むのがどうかしているのだが、俺がため息を吐いているのはそこではない。
俺をあの実験に恋した姉妹の姉に売ったことである。
「お前は同じ部員である俺を売る気かッ⁉︎」
「いや、別に売ろうという気は無かったぞ。ただ、何時までも童貞のままのお前が可哀想だなぁと思っただけだ。だから、弥生先輩にこう誘えって教えたんだ。『エロ漫画的な展開になる』って」
あの誘いはお前が考えた誘いだったのかッ⁉︎
だが、考えてみれば確かにそうである。だって弥生がそんなことを言うはずがない。確かにグラマラスなボディで男を悩殺する白衣姿だけれども、心は純情乙女な彼女が恋愛的に好きでもない男にそんな言葉は使わないだろう。というか、あの人意外とウブな人だから、門川みたいな人でもそう言えないだろう。
「じゃぁ、まんまと俺はお前の考えに嵌ったのか?」
「イエス」
また俺は深いため息を吐く。
……なんか、この薬、飲む気失せてきたな。
倉本の策に踊らされていたと知ってしまうと、なんかどうもやる気が出ない。萎えてしまった。
そんな精気の無い俺を見て、彼女は手を差し出した。
「え?何これ?」
「ん、ほれ。貸してみ」
彼女は薬を貸してほしいと言う。なので、俺は彼女の手のひらに瓶を置いた。
すると、彼女は特に表情を変えることもなく、さっさと瓶の蓋を開けた。
「なぁ、ここから二十メートルもすればGHBの部室じゃん?」
「うん」
「でさ、そこには舞ちゃんと、赤石さんと、小深さんがいるわけじゃん?」
「うん」
「彼女たちって、女の子として点数結構高い人達じゃない?まぁ、私はそんなに高くないけど」
「うん」
「でさぁ、そんな女の子……」
彼女が俺のスネにつま先で一蹴り入れてきた。そして、俺がまたも悶絶しのたうち回っているのを無視して話を続ける。
「でさぁ、そんな女の子たちのおっぱいとかお尻を後ろから鷲掴みにしたくない?」
「ゴスッって鳴った!今、俺のスネの所でゴスッって!」
「したくない⁉︎」
「したい!したい!したいけど、痛い!」
「……まぁ、いいや」
「まぁ、いいや⁉︎酷くない?俺の扱い酷くない?」
「でさぁ、そんな女の子たちの吐く息で満たされている部屋に男のあんたも入りたいでしょ?」
「入りたいけど、痛いのは嫌だ……」
「そっか。じゃぁ、これ、飲もっか」
「え?」
俺に選択の余地はなかった。まるで誘導尋問されるかのように、いつの間にかとんでもない返答をしていた。
倉本は蓋の開いた瓶を俺の口の中目掛けて押し込んだ。
「フグッ‼︎⁉︎」
まさかの攻撃に驚きを隠せない。そして、驚きのあまり、抵抗をする瞬間が一瞬遅れ、俺は口に入り込んだ異物を飲み込んでしまった。
「ゲホッ!ゲホッ!お前、何するんだよ!」
俺がそう彼女に向かって怒鳴る。しかし、彼女はそれに怯えるような様子ではない。ただ、何故か動揺しているのだ。
「……嘘……だ。本当に消えるだなんて」
「え?」
俺は恐る恐る自らの手を眺める。だが、そこには何もない。眺めているはずなのに、手が俺の目の前にあるはずなのに見えないのである。
「俺、本当に消えちまった⁉︎」