帰り道、俺は白浜と倉本と一緒に下校していた。今日はみんなで湯島の所にお見舞いに行くのだが……。
俺はちらりと白浜を見た。白浜の白い頰は冬の寒さで薄っすらと赤みがかっている。マフラーを首に巻きつけて、可愛らしい手袋を嵌めているその姿に俺の目は自然と向けられていた。
それも無理はない。だって、今日の昼休みに白浜が溜めていた心の内に潜むとんでもない思いを暴露したのだから。しかも、その内容は俺が好きであると間違えられてしまいそうな内容。
いや、別に俺は嬉しい。白浜にそう思ってもらえることは素直に喜べることだと思うのだ。だが、その白浜の暴露を聞いていた三人はなんともしんみりとしてしまい、言葉一つ喋る気力も失ってしまっているようである。その上、俺は姿を消していて、倉本以外のみんなは俺があの場にいたことなど知らない。だから、聞いていたなどと言えば、色々と俺の命が危ない。
だが、何故彼女たちはあの時、白浜の一言を聞いてしまうと一瞬にして彼女たちは喋らなくなったのだろうか。
色々と分からないことが俺の頭の中でサーキットレースをしている。一番速いやつで十周はしている。
倉本も相変わらず何にも話さない。昼休みから、俺を弄りに来ようともしない。いや、まぁ、確かに彼女に弄られないことは、それはそれですごく安心なのだが、それは彼女の気が晴れないというようなことである。
俺は倉本が何故こうも黙り込んでいるのかを彼女の視点から考えてみたものの、やはり俺には分からない。俺は男で、彼女は女。そういう所で考え方に違いが生じているのかもしれない。
駅まで三人で行くこの空気が静かだ。ヒヤリとした風が俺を震え揺らし、冬の空気を感じる。
二人とも静かに駅まで直行している。会話はもとより無く、靴音しか聞こえない。乾いた空に静かな革靴の底の靴音が響くが、空は俺の思いを無視するかのように澄んだ蒼。
気不味い。なんと、気不味い雰囲気なのだろうか。二人はそう思っていなくても、俺からしてみれば物凄く気不味い。
だが、話のネタとなるものが見つからない。
俺は頭の中でのサーキットレースを強制終了させて、ネタを記憶の中から探し出す。だが、そんな簡単に良いネタなど見つからない。
今の状況的に、彼女たちに最適なネタは何であろうか。しんみりとした空気を一変させてくれるようなネタが俺の頭の中に貯蔵されているのだろうか。
頭を悩ませる。今、倉本が頭を悩ませている理由を分からないような男が、彼女たちに最適なネタを選び出すことなんて不可能なのである。
だが、それでも何かして二人の無言地獄から逃れたい。そしてあわよくば、二人にちゃんと話しをしてほしいのである。
そして、選び出したネタがこれだった。二人に共通した意見があり、二人が共感し合うことで話をしてもらおうという俺の作戦が考えた兵器。
「なぁ、二人ってさ……」