彼女は俺と倉本の議論を一発でぶち壊した。
「お二人とも自分のことしか思っていないじゃないですか」
彼女の意見は俺たちが議論している意味を消した。あまりにも衝撃的で、攻撃的な意見だが、何よりも的を射ていて、俺と倉本にはその意見に何かを反応するということさえ出来なかった。それは賛成、反対なども出来ず、ただ彼女の口から出た真実に、自らの本当の姿を抵抗なく見出したということ。
彼女の指摘はこうである。
俺の意見は北瀬と湯島の仲を取り持とうという意見である。それは彼らにとっては非常に迷惑なお節介であることが予想でき、そのお節介は多分オカンのお節介レベルであろう。
そんな俺の意見は彼女からして見れば俺のためだけの意見なのだろう。そして、その指摘に反論出来ない辺りでは俺もそうなのだと認めざるを得ない。
彼女はこう思っているのだろう。
俺の意見は人の目を気にしすぎだと。
確かにそうであった。俺は何かと北瀬の周りの人の多さを気にしていた。それに劣等感を抱いていたのかそうではないのかはともかく、その数の多さに気を引かれていて、俺は北瀬の一人の友人であるという目立った行動を取りたかったのかもしれない。
そして、もう一つの意見である倉本のものも、白浜はさらりと簡単に薙ぎ払った。
倉本の意見はなるべく北瀬と湯島の件には関わらないというもの。それは自ずとやらねばならなくなった時には関わるが、基本的には一切ノータッチである。
だが、その意見だって白浜から言わせてみればただ自分のためらしい。
なるべく関わらないのは、関わりたくないからという倉本の心の意思であり、二人のことなんて考えていないのだ。あくまで自分のことを考えていて、北瀬と湯島のことは二の次なのである。
そんなことを言われても、俺と倉本は反論一つ出来ずに、「そうだな」の返事一つだけが口から出た。
駅から病院までの道の途中、俺は白浜にこう聞いた。
「なら、俺たちはどうすればいいんだ」
北瀬と湯島の仲を取り持つためであり、自分のためではない、そういう完璧に彼らのための行動はどうすれば出来るのか。
だが、白浜は分からないと言った。
なら、俺たちにはどうすればいいのだろうか。そう、思った時、彼女は俺のことを指差した。
「それです」
「え?」
「悩むことこそ彼らのためになると思います。一度、考えを改めて、一から考える時のその悩むという行動、それが一番いいと思うのです。一番に彼らのことを思っている純粋な出発点。それこそ、大事なんだと思います」
彼女は続けてこうも言う。
「それを北瀬くんか、みのりちゃんに見せてあげるんです。悩んでいる顔を。それで、みんなで一緒に悩んで、そうすれば答えが見えてくるんじゃないんでしょうか?」
珍しく白浜に悟られた。だが、白浜の言っていることは白浜らしいような前向きで、みんなで手をつなぐというフレンドリーな意見。
俺と倉本はそんな白浜の意見に賛同した。
「まぁ、それでいいか」