こんな奴でも青春したいっ‼︎   作:Gヘッド

362 / 392
久しぶりに

「よう、湯島。来たぞ」

 

病室の扉を開けて、俺は中にいるであろう湯島に声をかけた。扉を開けてすぐにカーテンがかかっており、そのカーテンは入り口付近からの視界を遮るようにだらりと垂れている。俺たちはそのカーテンを潜り、湯島に顔を見せた。

 

「お久〜」

 

患者服を着た湯島は白い壁の前の白いベッドの上にいた。俺たちの顔を見ると、痩せた頰にの筋肉を使って口角を上げて、目を細くした。

 

彼女のベッドの台の上には二冊のノートとペンケースがあった。勉強中なのだろうか。その姿を見て、俺は心の中で拍手をした。

 

「勉強とか俺絶対しないわ」

 

が、心の声を押し留めることは出来ずにサラッと口から出てしまう。

 

「あんたがしてたら、明日は隕石が降ってくるね」

 

「降ってきたら、俺、自分が神様なんじゃないかって思い始めるわ」

 

まぁ、一応、これでも神様が知り合いにはいるんだけれど。結構すごい神様らしいけど、それでも隕石は落とせねぇだろ。

 

倉本は湯島のノートを見た。

 

「これは誰のだ?随分と汚い字だが」

 

湯島はその言葉を聞くと、ピクリと眉宇を動かした。

 

「それか、それは……」

 

彼女は何か答えを探すように辺りを見回した。それが倉本に気付かれないように首を動かさずに目だけで。そして、俺と目があった。

 

「ああ、こいつ。こいつから借りてんの」

 

湯島は俺のことを指差した。もちろん、俺はそんなこと身に覚えもないし、ましてや俺はそんなに字が汚くもない。まぁ、確かに男の子らしい字は書くけれど、それでもそこまでではない。

 

それに、そのノートは理科のノートではないか。俺は理科の時間には黒板の板書を写してなどいない!

 

俺のではないのなら、もう、誰のかは一発でわかる。考えなくとも分かった。だが、ここは湯島のためである。

 

「ごめんごめん。授業中寝てたら、板書が結構進んでてさ、急いで写したら汚なくなっちゃったのよ」

 

俺のナイスな対応に彼女はウインクで返した。

 

白浜はそんなノートのことは特に興味がないようで、湯島に現在状況を聞いた。

 

「どうですか?今の所、変わりは特にありませんか?」

 

「うん。特に変わったところはないよ。ただ、やっぱり一日中ほぼベッドの上だから、つまんないし、細い腕もさらに細くなっちゃったけど」

 

それでも、湯島の笑顔は健在であるのを目で見て確かめている。大丈夫そうだ。

 

「まぁ、まだ大丈夫よ。三週間後の手術まではビンビンに元気だよ」

 

「おいおい、お前、なんで手術後よりも前の方が元気なんだよ」

 

「今は元気。後はもっと元気になんの」

 

そう彼女は未来を簡単に口ずさんだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。