「お前、本当面倒くせーやつだな。あの時は北瀬に心配しないでほしいって言っておきながら、今となっては心配してくださいなんてそんなの筋が通らねぇ」
俺が言っていることは多分多くの人が抱く意見だろう。彼女は北瀬に心配しないでほしいと言っていた。自分が病気であるっていうことを彼に知ってほしくないのだ。もし、彼に病気であると知られたならば、北瀬は本気で彼女のことを心配していただろう。
もちろん、北瀬はもう彼女が病気であることはもう知っている。だが、病気のことを知る時期が少し遅かった。それだけでも、人は嫌になるものだ。あるグループの中で自分だけ数を数えられなかったら嫌なように。
きっと北瀬は嫌だという気持ちが何処かにあるんだろう。だから、彼は少し嫌気がさしてしまったのかもしれない。
それか、彼自身が彼女に会うのを自粛しているという可能性もあり得る。湯島は北瀬に会いたくないと言っていた。それを聞いた彼はあまり湯島と会うことを善い行いだと思ってはいないんじゃないだろうか。
まぁ、ここまで考え尽くしても、あくまでこれらは可能性論であり確実なものではない。だが、それでもこの可能性がダントツで他の可能性よりも高いだろう。
「私が悪いのは分かってる。これは私が望んだことだし、これでいいんだって思ってる自分もいる。だけど、やっぱり、好きな人と別れて嬉しいわけないじゃん」
彼女は涙を少しだけ目頭に浮かべる。そんな彼女の姿を見て、俺は何にも言い返すことなんて出来やしなかった。
「あのさ、俺もお前に一つ話したいことがあるんだよ」
場が湿っぽくなってしまったため、何か話を変えようと俺は他の話題を切り出す。せっかくのお見舞いをしんみりとした雰囲気にするのもどうかと思う。やっぱり、辛い時にこそ、そういう話題はよした方が良い。
「何?」
湯島も俺が話を変えた意図が分かったのか、指先で涙を拭き取った。
「その、俺、実は大きな壁にぶつかってるかもしれないんだよ」
「何それ?」
「いや、そのさ、昼休みにさ、ちょっとした わけあって、女子会トークを聞いてたわけよ。もちろん、女子たちは俺がいることなんて知らないで」
「ふ〜ん。それで?何があったの?」
「その、白浜がこんなこと言ってたの聞いちゃって」
「こんなのって?」
「俺のこと見てると胸が苦しくなるって……」
俺がそう彼女に言うと、彼女は口をぽかんと開けたまま唖然としていた。目を大きく開き、声を出さずに驚いているようである。
「そのさ、これってまさか……」
俺がその先を言い出そうとした時、彼女は俺に言葉を言わせないように俺の言葉を押し潰しながらこう叫んだ。
「アレルギーだよ!アレルギー!」
「……えっ?アレルギー?」
「そう、アレルギー!ほら、呑酸ってあるじゃん?お前を見てると、胃の酸が逆流しちゃうんだよ!ストレスで!」
「え?マジで?白浜ってそんなに俺のことが嫌いだったの?」
まじか、あのピュアな白天使が俺のことを嫌いだなんて。
……すごいショックだわ。