「戻って来たぞー」
倉本がそう言いながら部屋の中に入ってきた。倉本も白浜も手には一口飲んだであろうペットボトルがある。俺と湯島は帰ってきた白浜を見て、少しだけ平静を保てずにいた。ぎこちない笑みを浮かべて、彼女に目を合わすことが出来ない。
「お二人ともどうかなさいましたか?」
「いや、なんでも」
「いや、なんでも」
二人で同じ言葉を口にする。とにかく今さっきまで話していた内容を彼女に聞かれていたのではという不安があったが、彼女の反応からして聞いてはいないだろう。
彼女が俺を見ると胸が痛いという話をしていたら、とうの本人である白浜が帰ってきてしまったのだ。そりゃぁ、あたふたとしてしまう。
俺は湯島に言われたことを思い出した。
白浜は俺を見ているとアレルギー反応を起こして呑酸が出るらしい。呑酸、それは逆流性食道炎。胃酸が逆流してしまうこと。
ああ、きっと白浜はそれほど俺のことが嫌いなのだろう。俺は白浜のことが好きだったのに。
……あっ、いや、好きと言っても、別に恋愛的な意味ではない。友達としてである。確かに前まで恋愛対象として好きだったというのは認めるが、今となっては違う。
白浜は魅了的だ。可愛いし、ピュアだし、純白の天使が目の前に現れたと感じてしまう。そういう所が男としてグッとくるけど、それと同時に近寄りがたい存在となってしまう。そんな真っ白な人を俺みたいな奴で汚してしまいたくはない。
まぁ、俺が好きだから嫌いだからという意味もなく、もう彼女は俺のことが嫌いなのだろうが。
「なぁ、白浜。お前、俺の何処が嫌いなんだ?」
「え?どうしたのですか?」
「いや、言わなくても良い。お前、本当は柚子木光牙アレルギーがあるのだろう?それで、俺のことが嫌いなのだろう?」
「私ですか?私は別に柚子木くんが嫌いなわけじゃありません。それにアレルギーなんてものもございません」
「じゃぁ、俺のこと、好き?」
「はい?好きかですか?まぁ、好きです」
いやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!白浜は俺のことが好きらしい!
俺は満面の笑みをみんなに見せた。そして、何故か湯島が溜息を吐きながら頭を抱えてしまう。白浜と倉本はまず状況をよく理解出来ていないため、どうしてよいのか分からず、とりあえずポツンとそこに立っていた。
「柚子木、お前どうした?二人でいる間に洗脳でもされたか?」
「されてねーよ!どうせあれだろ?俺のことキモいとか思ってるんだろ?」
「よくわかったな」
もうマジでしょげる。そういうこと言われちゃうと俺のガラスのハートがバリバリに砕かれる。
それから少しの間そんな雑談をしていた。そして、俺たちは湯島に別れを言って病院をあとにした。