帰り道、また電車に揺られていた。行きの時よりかは少しだけ和やかで厳粛な雰囲気ではなく、居心地は良かった。
ただ、白浜と倉本はあの時俺が聞いたことを追及してくる。
「柚子木くん。あの時、何であんなことを聞いたのですか?」
「そうだぞ愚民。あの時、何であんなことを聞いた?なんか、すごく意味深に聞こえるのだが」
「ああ、あれ?いや、そのさ、なんとな〜く?」
「それじゃ答えになっていないぞ」
白浜と倉本の問い質しは実にえげつなく、人のプライバシーにずかずかと入り込もうとする。手を緩めることなく、ただ己の知識欲に対して愚直に質問の嵐を俺に投げつけるのだ。
「まぁまぁ、いいじゃん」
「よくありませんよ。何か柚子木くんが何かを企んでいるように思えてしまいます」
ピュアで白天使な白浜にそんなことを言われてしまうと結構傷つく。白浜だからなのだろうか、彼女のようなあまり人を疑わない人に疑われると心に響いてしまうものなのだ。それこそ、彼女が疑うだけで、もう俺が百パーセント悪いようになってしまう。
このままこの話をしていたら俺の立場がどんどんと悪くなってしまう。かといって、俺が白浜のあのすごく怪しい言葉を聞いていたと本人に言ってしまえば、それこそ俺の立場がさらに悪化する。
まず倉本以外の他の人には無駄で勝手にプライバシーな空間に入り込んだこと。俺は男だから、女の子のプライバシーな空間に入り込んだとなると、世間的な目からして色々とヤバイ。
そして、白浜が俺のことを男として好きなんじゃないかと勝手に舞い上がった自分がいるという事実。多分、白浜は俺のことを男としては好きではないだろう。だから、勝手に舞い上がったなんて知られてしまうと、俺の面目丸潰れ。
そんなことになっていいわけもなく、俺は話を変えることにした。なるべく彼女たちが話に食いついてきて、なおかつ俺の話なんかをすぐに忘れてしまうような話のネタ。
「なぁ、そういやさ、俺、湯島に聞いといたんだよ。北瀬のこと」
「お前、さらっと話を逸らそうとしてないか?」
「まぁ、そんなことよりも大事だからさ」
北瀬の話をしたが、倉本は食いつきそうにない。
だが、もう一人の少女は違った。
「どう言ってましたか?」
食いついた。彼女が食いつけば、自然と倉本も話に乗ってくるであろう。
「あのさ、湯島は分からないらしい」
「分からない?何がですか?」
「別れたのか、別れていないのかさえ分からないんだと。別れ話なんてしてないらしいけど、北瀬がこの頃彼女に電話とかもしてないらしくてさ、自然消滅かもって言ってた」
確かに湯島はそう言っていた。彼女自身、今回のことは分からないと。彼女は別に別れたいなんて思っていないし、むしろもっと一緒にいたいって思っているんだ。ただ、面倒くさい乙女心がその思いを邪魔して、色々と回りくどくなっているだけ。
俺がそう話すと、白浜はいかにも決まり悪そうな顔をしている。俺の話に納得が出来ないようだ。
「いや、白浜。この話、かも、だから。あくまで可能性だから」
「分かってます。けど、その可能性は低いんじゃないでしょうか?」
「え?何で?」
「だって、北瀬くんですよ?北瀬くんが、自然消滅っていう終わらせ方で納得出来るんですか?」