北瀬守。身長は俺と同じくらいで、体重はちょっと俺より軽い。運動神経はそこそこ良く、見た目とは相反して成績は案外悪くない。チャラチャラとした性格だが、やる時はやる男で、クラスの中心人物みたいな役割。そのため人から嫌われることもあまりなく、笑顔を絶やさない。サッカーが上手い。
これが今、知り得ている彼の情報だ。ここから見る限り、いい人そうに見えるし、実際悪い奴ではない。まぁ、だからこそ、嫉妬とかが彼にはあるというのも否定できぬ事実。
俺は白浜に言われた。湯島との二人の仲を自然消滅なんかで終わらせるような男なのかと。
俺はその時なんとも言えなかったが、確かにあいつがそんなことするはずがない。それは根拠のないことだが、断言出来た。
でも、今、二人の仲は自然消滅のように冷め切ってしまっていると考えられる。そこが腑に落ちず、どうもおかしいのだ。
部外者である俺たちが首を突っ込みすぎではあると自覚してはいるが、それでも気になって仕方がない。
だから俺はついにあいつと話すことにした。
「で、何故儂をここに連れてくる?」
幼乃が機嫌悪そうにそう嘆いた。彼女の腕には野良猫のジロウが抱きかかえられている。
「お前、その猫本当にジロウなのか?なんか前見た時よりもずいぶんと愛想が悪いような……」
「ん?まぁ、そこら辺にいる猫はほぼみんな猫じゃからな」
どうでもいい事実を聞かされた。前まで呼んでいたジロウという猫を彼女は見分けられていなかったのか。つまり、猫であればジロウ。
「……で、何で儂をここに連れてきた?サラッとお前、儂の質問に答えようとしないな!答えんか」
「えっ?だって言いたくないんだもん」
「言いたくないほど何かデリケートな事情なのか?」
「まぁ、そうだな」
「じゃぁ、儂を呼ぶ必要は?」
「あっ、そ、それは……」
何も言えなくなった。この幼女、頭いいから絶対に言いくるめられてしまう。
いつもだったらこんなに面倒くさい女を使わないんだが、今回ばかりはそうではいかない。今回は彼女が必要不可欠なのだ。
なので、彼女には本当のことを話した。
「……なるほど。北瀬と話をしたいから儂を呼んだのじゃな?」
「うんうん」
「何故儂がいる?お前たち、仲良かったではないか。喧嘩か?」
「喧嘩とまではいかないけど、口聞かないっていう〜か。まぁ、一方的に俺が話さないだけだったんだけど」
なよなよとした俺に幼乃は蹴りを入れてきた。見事俺のスネにクリーンヒット。すごく痛い。
「……お前は女か?」
「ちげぇよ。ただ、何となくあいつと喋ることに抵抗あるだけだって。だから、俺とお前の中に入れるような存在がお前だけだからお前を呼んだんだ」