幼乃の思わぬ中断で、北瀬に湯島とのことを聞ける流れも途切れてしまった。多分、幼乃のあの行動はきっと、この会を楽しみたいからなのだろう。だから、彼女は俺の話を中断させた。
北瀬に聞こえぬよう、小言で幼乃にこう聞いた?
「お前って案外こういうパーティー楽しんじゃう系?」
俺がそう聞くと、彼女は俺を白い目で見る。何を言っているんだ、と言葉が顔に浮かび出ていた。
「楽しんじゃう系に決まっているじゃないか。そうじゃないと、ここは貸さんぞ?」
それもそうだ。無愛想、かつ不器用な彼女にしてみれば、この部屋を貸すなんてとても優遇されているということ。彼女は顔を一切変えてないが、彼女にとってこの時間は掛け替えのない時間なのだ。少なくとも、やはり彼女に友達と言えるような人が多いとは思わないし、そんな場面に遭遇した事もない。だから、彼女はこの時間を大切にしたい。
「……お前って可愛い奴なのか、可愛くないのか分かんないわ」
「そこは可愛いと言え。女の子は可愛いと言われると誰だって喜ぶぞ」
う〜ん。俺が幼乃に可愛いって言うのかぁ〜。それはなぁ〜、ちょっとヤバい気がするんだよなぁ〜。
だって、あの幼乃だよ?誰もが最初は小学生って間違いちゃうくらい、幼い姿をした幼乃に俺が可愛いって言うの?
そしたら、もう犯罪でしかないでしょ。犯罪だよ、犯罪。幼女犯罪でしかないよ。
俺が幼乃に可愛いと言うのを渋っていると、幼乃は北瀬に同意を求めた。だが、北瀬は俺たちの話を何一つ聞いていないので、話の内容が一切わからない。
「北瀬、やっぱり女の子には可愛いって言うべきだよな?」
「え?な、何のこと?」
「何のこと?そりゃぁ、女の子には可愛いって言ったら、誰でも喜ぶって話だよ」
「何で俺?」
「そりゃぁ、お前、柚子木と違ってプレイボーイだからだよ」
「プレイボーイじゃないし。俺、そんな淫らなことしてないから!」
北瀬は幼乃にあらぬ方向に誤解されているようである。もう、そうなってしまうと、ドンマイとしか声の掛けようがない。
まぁ、実際、噂では北瀬が一躍プレイボーイになっているというものがある。サッカー部の英雄とまでなった北瀬が、そのネームバリューの恩恵によりプレイボーイになっているという若干の皮肉が篭った噂である。多分その噂に幼乃は感化されてしまったのだろう。純粋な幼乃らしい。
ちなみに、その噂を広げたのは他の誰でなく、この俺。ちやほやされている北瀬を皮肉って、噂を広めてやった。
北瀬もその噂を知っているようで、弁明に苦しんでいた。そして、そんな北瀬を見ていてニタニタと笑みがこぼれてしまった。
もちろん、彼に言うつもりなど毛頭ない。俺が噂を流したと。
俺は北瀬の肩をぽんっと優しく叩いた。
「お前ほどの男ならそんなことあるって。誰かが皮肉を詰めて言ったことだろ?気にすんなって」
ああ、ダメだ。笑いを堪えられない。
「……何その笑み?スッゲェ怪しいんだけど。まさか、お前、噂を流してないよね?」
「流してないない」
「……本当に?」
「本当。本当」
「……」
「……」
「お前かぁぁぁぁぁ‼︎」
即刻バレました。