「俺が女心を分かっていないだと?何を言っている?この世で誰よりも女性を愛しているこの俺がっ⁉︎冗談はよせ」
北瀬はそう言うと、俺と幼乃の素直な感想を簡単に一蹴した。どうやら彼自身、今世紀最大のフェミニストだと自覚しているらしく、それを得意げに自負している。それはそれでいいのだが、やはり女心を分かってはいないようだ。
確かに週ニで連絡を取り合うのが多いのか少ないのかは恋愛経験のない俺には分からないことだ。もしかしたら、週に二回連絡を取り合うだけでも多いのかもしれない。それに、彼の可愛らしい文面は女の子受けもいいだろう。
だが、それでも彼の付き合っている相手は湯島なのである。あの白い壁面に囲まれた、窓からしか外を見ることの出来ない寂しい部屋なのだ。死神が病院を徘徊し、嫌な現場を見ることだって多々あり得るほどの。そんな薄暗い環境にいる彼女にとって、友達や北瀬のような彼氏の存在はとても大きいはずだ。だから、そんな彼女への連絡が週ニなのは少ない気がする。
まぁ、そんなことをざっくりと簡単に、この場が湿気った空気にならないように彼に諭した。彼は頷きながら、う〜んと悩んでいるような顔をした。
「もうちょっといっぱい送れよ。メール」
「う〜ん。そうだな。そうした方がいいな。でも、いっぱい送ると嫌われちゃうんじゃないか?実際、好きだった女の子にいっぱいメール送ってたら嫌われたし……」
「いや、北瀬。それはお主がもともと好かれてなかったからじゃろ。その子とは付き合ってたのか?」
「……いや、片想い……」
「だろうな。お前のような男を好きになる女などそうそうおらぬ。儂も女じゃから言わせてもらうが」
幼乃はきっぱりとある意味貶すようにこう告げた。
「北瀬、お主の彼女、相当物好きだな!」
「ハウッ‼︎そ、それは、つ、つまり……」
「北瀬=変人」
北瀬はまるで銃で心臓を撃たれたように、胸を手で押さえながら後ろへと倒れた。どうやら一番言われたくない一言だったらしい。だが、多分北瀬とよく一緒にいる俺たちみたいなものなら、最初っからそんな男だろうと予想していた。もちろん、その予想はダーツの真ん中に当てたような感じで、大的中。
……ん?あれ?待てよ?
北瀬は付き合っていると言った。つまり、湯島の考えていた、もしかしたら自然消滅かもという可能性論はあり得ない。それに、北瀬は相変わらず湯島のことをぞっこんラブという感じらしい。
「なぁ、じゃぁ、お前。なんで湯島の病院に行かないんだ?暇な日ってあったんだろ?」
そう。そうである。あの、北瀬が、今世紀最大のフェミニストが湯島の所に行かないなんて考えられない。しかも、約一ヶ月間も。
これはもしかしたら、他の女と楽しくカラオケパーティーなんてこともあり得る。いや、もしかしたら、その後、大人の階段を……。
「ん?何でって?ああ、疲れてたから。行かなかったわ」
「ほら、やっぱ……って、え?本当に?本当に、行かなかったの⁉︎」
「うん。疲れてたし、行かなくていいかなって……」
ええええええええええええぇぇぇぇぇぇ⁉︎嘘だろぉぉぉぉぉ⁉︎あの、北瀬が?あの北瀬が、女の子よりも自分のことを優先するだとぉッ⁉︎
しかも、疲れているから?それってつまり、サボりを自白したってこと⁉︎