北瀬が言うには、サボった日の前日にはサッカー部の練習があったらしい。その練習がなんと物凄くキッツーい練習内容だったとか。
が、やはり北瀬の口から出てきた言葉など信用度ゼロパーセントである。
「信用できねぇ」
「それは儂も同感じゃ。こんな奴を信用できぬ」
「えええっ⁉︎俺って信用ない?」
「信用あったら、別れてるとか思ってねーよ」
だが、ここで信用しないと彼の話が先に進まない。ここは折れて、彼の話を信用することにしよう。
途轍もなく癪だが。
「マジで、本当にサッカー部の練習血反吐出るほどキッツーいのよ。あんなの耐えられるのか、ってぐらいにね」
「……そのまま死んでしまえば良かったのに……」
「ハーイ!そこ!物騒なこと言わない!まぁ、いいや。で、とにかくその練習の辛さで疲労困憊でさ、もう俺の身体はヘトヘトなのよ。だから、ベッドの上でぐうたらぐうたら、テレビの前のソファでのんびーりと休みを満喫してたんだ」
「ふ〜ん」
「ハーイ!そこ!俺の話に興味を示しましょうね!俺、ハムスターだから、構ってくれないと死んじゃうよ!」
「死ね!」
「死ね!」
今日は一段と北瀬への当たりが強い。北瀬の心はズタボロだが、彼曰く、誰にも構ってもらえず孤独を感じる時が一番辛いらしい。
「おい、ハムスター」
「はい!ハムスターであります!」
「じゃぁ、湯島と連絡を取らなかったのは、練習に疲れてたからとか」
「YES‼︎そう、地獄の練習でヘトヘトな俺はお家に帰ったら、メシを食って風呂に入って、即行寝るわけ!まぁ、簡単に言えば、連絡する時間なんてなかったってわけよ」
「そんなに疲れるもんか?練習って」
「疲れるもなにも、文化部と運動部は大違いだから!特に、俺とかモノスゲー練習させられてんだから!」
「ふ〜ん」
「ハーイ!そこ!興味を示しましょうね!」
正直に言ってしまえば、北瀬のことなど特に興味はない。湯島についての弁明を訊きたいだけであり、彼の私生活を事細かに説明されても困る。というか、その私生活を知ったところで何の得にもならないし、俺らはほぼ聞き流していた。
ただ、この言葉だけは耳に残っていた。
「お前さ、何で部活、そんなに頑張ってんの?」
この言葉は友達として言ってはいけないような言葉かもしれない。部活を頑張っている友達に、まるで頑張るなと言っているのだから。
部活を頑張ることは学校的にも、そして彼自身にも良いことという考えが一般的だし、部活をする行為自体が多くの人にプラスのこととして捉えられている。それは俺も同じで、部活というものは、人生でそう経験出来るものでもないし、青春という概念の重要な柱でもある。
だから、部活をするなとは言っているわけではない。だが、言いようによってはこう聞こえるだろう。部活をするなと。
「前まで部活を全然頑張ってなかったじゃん。どうしたよ?急に頑張りだして。なんか、お前らしくないぞ」