コトコトと鍋を煮込む音が聞こえる。その鍋がいつできるのか、まだかまだかとソファの上で寝転びながら考えていた。
「光牙様、今日は珍しくテレビつけないんですね」
エプロンを着て、おたまで鍋をかき混ぜながら狐色のふさふさの尻尾を振っている。狐の尻尾も犬のように気分がいいとフリフリとなるのだろうか。
「なんかさぁ、今日はテレビじゃなくて話とかしたいんだよね」
俺らしからぬことを言った。もちろん、北瀬と湯島の影響を受けて、何となく自分もテレビとかじゃなくて話合った方が仲良くなるなと思ってただけである。
すると、ココはさっきまで楽しそうに振っていた尻尾を止め、俺を不審者を見るような目で見てきた。
「どうしたのですか?ちょっと、気持ち悪いですよ。変なものでも食べました?」
あれ〜?おっかしいなぁ〜。俺、今、結構良い事言ったつもりだったんだけどな。何でそんなに気味悪がられるんだ?
「ねぇ、俺のこと、どう思ってる?」
「ふぇぇぇ⁉︎な、なんてこと聞くんですかっ⁉︎」
「いや、思っていたような言葉と違う言葉を投げかけられて。俺ってどう思われてんのかなぁって」
すると、ココはもじもじとしながら、恥ずかしそうにしている。
「そ、それは……、す、好きで……」
「あっ、ゴメン。そういうこと訊いてんじゃないんだけど」
「んもぅ‼︎何ですか⁉︎ほぼ全部言っちゃったじゃないですか!」
「いや、まぁ、悪い。説明が悪かったな。あれだよ、俺の人柄ってやつ。どう思ってる?」
彼女は食器棚に置いてある食器を適当に選び、食卓に置いた。その次にランチョンマットを用意して、食卓を綺麗に飾る。そして、食卓の真ん中には鍋を置いた。
「人柄?う〜ん、光牙様の人柄かぁ〜。簡単に言えばしつこいほど表に出たがる影の人みたいな感じですかね」
「しつこいほど表に出たがる影の人?何それ?全然嬉しくねぇんだけど」
「一応褒めているんですよ。説明をしておきますと、光牙様は色々な人を輝かせる影何です。その影にみんな助けられていながらも、影は第三者からは見えない。常に当事者だけが礼を言う。だからあまり目立たない」
「……だから、影の人なのか。うん、それは褒め言葉として有難く受け取るが、表に出たがるというのはどういうことだ?」
「そのままの意味ですよ。光牙様自身、あまり目立たない存在ですから、たまにちゃっかりと目立とうとしているじゃないですか」
ウグッ‼︎そ、それだけは言われたくなかった。実は薄々それに感じてたんだよ。無意識に俺は目立とうと馬鹿なことをしているのが多々あるが、何かと運悪く目立たないということが。
そこのところは色々とおかしいと思う。結構、俺自身個性強い方だと思うけど、何故だろうか目立たない。運動神経も並よりかはいいと自負しているし、言ってしまえば顔が怖いことも個性の一つ。なのに、何故か目立たない。
「……この話はやめよう。俺の心が抉られる」
そろそろやめないと本当にガラスのハートがバリバリに破壊される。
食卓の椅子に座る。目の前の鍋の蓋からは白い湯気がもくもくと出ており、胃が疼いた。ココは鍋の蓋をゆっくりと開ける。鍋の中にはミンチにした肉のような丸い物体が浮かんでいて、その周りには豆腐、白菜、えのき、ネギなどが入っていて、食欲をそそる。
「パンパカパーン!今日のお夕食はつみれ鍋でございまーす!お魚をすり潰して丸くしたものに、肉団子も入れてます!言わば、魚も肉も丸々鍋‼︎なんちゃって、です!」
「……うん」
「あれ?今の掛け、上手くありませんでした?」
「いや、上手いと思うけど、さっさと食わせてくれ」
「あっ、はい」
ココお手製の魚も肉も丸々鍋を戴こうではないか。見るからに美味そう。
「じゃぁ、いただきまーす!」