俺はふと気になった。こんなにも北瀬と湯島の間にある愛は大きいのに、何故それを数ヶ月前まで気づかなかったのだろうかと。
少なからず俺は北瀬とも、湯島ともよく会っていた。だが、四月から半年ほど、一切として付き合っているという事実を見たことはなかったのだ。二人に怪しい行動は今思えば多々あったものの、それでも二人が付き合っているという確証につながるものはなく、またそういう風にも思ってさえいなかった。
どのような恋路が、俺の知らぬところでどれほど大きな愛を育んだのか。知識欲の範囲に入った。
「……あんま言いたくないんだけどなぁ」
北瀬は恥ずかしそうにそう言った。多分、今、俺に尋ねられた時、過去のことを思い出して、にやけたのだろう。この幸せ者め。
だが、北瀬は背筋をピンと伸ばし、姿勢を良くする。
「まぁ、そろそろみんなには言ってもいいかな。俺と湯島のラブストーリー」
「あっ、ごめん。今の一言で聞く気失せたわ」
「儂も。同感じゃ」
「えええっ⁉︎今、せっかく話す覚悟決めたのに⁉︎」
「最後のラブストーリーがダメだった」
「儂、若干殺意が湧いたぞ」
俺と幼乃は鋭い目で北瀬を見る。北瀬はたじたじと怯み、おっかねぇ、と一言呟いた。
「で、どっちなの?俺に話してほしいの?話してほしくないの?」
「そりゃぁ、ほしいよ。だけど、あの変な言い方はやめろよ。殺意しか湧かねぇ」
「はいはい」
北瀬は腕組みをした。準備室の白い天井を見上げ、その白いキャンバスに彼の空想が描かれた。彼はその空想を言葉にして伝えた。
「夏、サッカー部の練習試合の帰りにさ、たまたま湯島を見つけたんだよ」
「たまたま?」
「そう、本当に偶然だった。で、俺が声を掛けようとしたら、あいつ、クラっと倒れそうになったんだよ。で、まぁ、俺はその状況にビビったんだけど、一応彼女の支えになってあげたんだ」
……ふ〜ん。
「で、湯島も俺が肩を貸しているのに気付いたら、すんげぇ驚いてさ、尻餅ついてて。まぁ、そんなこんなで、俺は夏休みにあいつに会ったんだ。それで、俺は湯島の体を大丈夫かって心配してやったら、大丈夫ってあいつが言うんだ。だけど、やっぱり彼女に体のことを聞いたんだけど、上手く交わされて、結局、十二月ぐらいまで俺、あいつの病気のこと知らなかったんだよね」
……ヘェ〜。
「だけど、心配だったし、俺が家まで送ってやるよって言ったら、湯島は拒否したんだよ。で、話を聞くと、親ともめたらしい。多分これも彼女の病気のことだろうな。で、家から出てきて走ってたら、重度の喘息持ちの彼女には辛すぎて倒れそうになってたというわけ」
……ほうほう。
「だけど、色々と話していくうちに、あいつ、家に帰る気になってくれて。それで、家に帰したんだ」
「……で?」
「え?何?」
「いや、終わり?」
「うん。上々の完結だけど」
嘘でしょ⁉︎めちゃくちゃ話簡単にしすぎじゃない?
「ちゃんと話せよ!わかりやすく!」
俺が指摘すると、北瀬は待ってましたと言わんばかりの顔をする。
「じゃぁ、お前が話せよ。お前の初恋、どんなんよ?」