入り口のドアのところで堂々と仁王立ちをしている彼女。若干のドヤ顔で、涼しげな風に打たれながら靡く髪を耳の後ろに寄せた。
「あれ?私以外にもう一人?むむむ?これは由々しき事態……?」
この女、何をほざいているのだろうか。由々しき事態も何も、この屋上には誰も立ち入ってはならないのだが。この女、校則を破ってるよ、生徒会長なのに。
「ここには先客がいたか……。ふ〜む、これはこれは。せっかく昼は涼しげなこの屋上でランチタイムでもと思っていたのだが……」
「悪かったですね。つーか、いいんですか?あんた、生徒会長でしょ?」
「生徒会長?ハッ、笑わせないで。あんなの、押し付けられた役だし、生徒会長だなんて言っておきながら、結局のところ教師の言いなりなのよ。表上だけよ、その名は」
彼女はそう言うと少しだけ憂いを帯びた顔を見せた。俺はそんな顔をしている彼女を見て、飯を食う気が失せた。俺は弁当を纏めて、教室に戻ろうとした。
「そうですか、変な話をして悪かったですね。じゃぁ、俺、戻ります。後はお好きにどうぞ」
俺はそう言い残して帰ろうとしたら、彼女に手首を掴まれた。
「ちょっと、どこへ行く気?」
「え?教室に戻るんですけど」
「何を言っているの?共犯よ?」
共犯、それはつまりこの屋上に出たということを言っているのだろうか。
「大丈夫ですよ。教師にチクったりなんてしませんよ。だって、俺、あいつらに顔合わせんのも最悪だし、それにチクったら、俺がここにいたことだってバレるじゃないっすか」
「うんうん。そうね」
「はい。そうです。なので、帰らせていただき……」
「ダメ!」
「ええええええっ⁉︎マジで?」
「マジで」
この生徒会長さんは俺をどうしても行かせたくないらしい。物凄く力強い、まるで女子の比ではないくらいの力で俺の腕を握る。これはどうも逃げることなど出来そうもない。
ため息をついた。
「わっかりました。言われた通り、ここにいるとします」
彼女は満面の笑みを浮かべた。
「うん、よろしい。柚子木君らしいね」
「あはは、まぁ……」
俺はナプキンを広げて、弁当の蓋を開けた。橋を掴んで、その箸でご飯を口に運ぶ。その姿を見た生徒会長は俺の隣に座った。
「あの、一つ聞いていいっすか?」
「ん?何?」
「いや、何で俺の名前なんか知ってるんですか?さっき、あんた柚子木って言いましたよね?俺、自分のこと柚子木なんて一言も言ってないですけど……」
「ああ、そんなの別に大した理由なんてないよ。私はただ知っていた。それだけだよ」
「知っていた?俺の名前を?俺、あんたと話したことないと思うんですけど……」
「話さなくても、名前ぐらいは知っているよ。生徒の顔と名前はほぼ全て覚えているつもりだから。それに、君みたいな問題児は色々な話が耳に入るからね。忘れないよ」
「へぇ、そう。あんた、そんな人だったんだ」
全校集会のような時に彼女はいつも壇上で堂々と立っている彼女。それが目の前にいる。俺とは遠い存在だって思ってたけど、案外違うのかもしれない。