彼女のその一言は俺の中の既存概念をぶち壊した。
俺と話していると楽しい。そう都会者から言われたことが新鮮で、認められたとふと思ってしまった。彼女を、他の人たちを都会者だと一言で蹴っていたが、実はそんな彼女らと自分たちを比べていたのかもしれない。俺たち田舎者にいる奴らは他の奴らと比べて流行にも疎いし、土の匂いだってする奴らだっている。それに比べて都会者は何をしても俺たちより先を行っていると思い込んでいた。
勝手に勝負して、勝手に負けて、勝手に妬んで。
もしかしたら、今までの行為は空回りだったのかもしれないと思ってしまった。
それでもって、端的に褒められて少しだけ嬉しい。素直に照れた。
「……まぁ、あざっす。何か、恥ずいっす」
それともう一つ気付かされたこと。それは前まで勝手に一人で思い込んでいた生徒会長の人柄とはまるで別人だったこと。確かに昨日から薄々感じてはいたが、その予想をはるかに越すほど彼女は……。
「脆い」
呟いた。彼女の心があまりにも脆いことを俺は感じ取り、それでもその弱さを見せまいと装っている。故に彼女は脆いのだ。
所々見せる陰りを帯びたその顔の裏には悲しみがたまっている。だが、それを見せまいと必死で、生徒会長のお面を被って。
そうなると彼女の顔はますます見えなくなってしまう。だから、周りのみんなは彼女の本心に気付かず、彼女を知らずに傷つけてゆく。脆くなった内側にいる彼女。硬い殻で覆われていても、苦しみが伝わってきた。
やりたくないのにやらされている。強く見せようと胸を張る彼女と弱く脆い彼女。
「頑張ってください」
声を掛けた。その声を聞いた彼女は最初きょとんとしたアホっぽい顔をしていたが、急に青ざめて叫んだ。
「イヤァァァァ‼︎学園の問題児がまさかの優しいスキルを持っていただなんて‼︎」
「それ、すんげぇ貶してません?」
「そんなことないわよ。もう少し優しくされたら惚れてしまうわ!」
「一応聞いておきますけど、もう少しって具体的には?」
「あと、地球二周半ぐらい優しくしてくれたらかな?」
その程度の説明全ッ然わかんねぇ〜。それに分かったとしても、地球二周半分は俺到達するまで何十年もかかりそうな気がする。
「……ふははッ!」
突然彼女は笑い出した。周囲からの期待によるストレスでついに頭がイカれたのかと思ってしまった。
「どうしたんですか?」
「ん?ああ、やっぱり、こうやって気兼ねなく過ごせるのは凄く心地よいなぁ〜、って思ってさ。ね、そう思わない?」
彼女は俺にそう尋ねた。詰まる所、俺も教室の中で完璧に浮いちゃってる存在だし、少なくとも今の方が少しだけ気が楽だということに偽りはない。
「まぁ、そうっすね……」
その回答は彼女にとって嬉しいものだったのか、俺の手を彼女は握りしめた。
「じゃぁさ、これから一緒に私とご飯、ここで食べよ!」
煌めく潤った瞳。艶のある髪が湿気を含んだ風で靡く。細く白い指先が俺の手を包み込んでいた。
青い空、漂う大きな白い雲の下、俺と彼女の物語が始まってしまった。