「で?」
北瀬は手に顎を乗せるような姿で俺の話を聞いていた。が、俺の話が終わると、不意に険しい顔をする。目と目の間に縦に伸びる皺を作り、首を傾げた。
「で、結局のところ何って話になるんだけど……」
「おう。そうか」
「うん……」
沈黙が流れる。
「って、何そのエピソード⁉︎最初の部分しか語ってねぇじゃん!出会いだけ語って、後はご想像にお任せしますってか⁉︎酷くない?」
「まぁ、これ以上言うと、俺の恥ずかし〜い過去が大衆の目に晒されることになるしな。言いたくない。すまんな、北瀬」
「ええええええ⁉︎嘘でしょ⁉︎俺に対して偉そーに、短いとか言ってた人がまさかの出会いしか語らないとかッ!人のこと言えねーじゃねーか!」
北瀬は同意を求め、幼乃にも話を振る。
「ベタじゃのぅ〜」
の一言だった。
「クッソ!なんか俺だけスゲー損した気分!柚子木にもっと恥をかかせてやりたかったのに!」
「いやいや、色々と聞かれちゃマズーい心の声がダダ漏れなんだけど。っていうか、案外お前も俺と同じで最初の方しか話してねーよ。しかも、俺みたいに事細かく説明もしてねぇから」
「俺はお前が恥ずかしそうに顔を赤らめながら、お前の恋話の終焉まで聞きたかったんだよ!」
「終焉って言い方は凄く不吉なんだけど」
北瀬は腹を立てながら、テーブルの上に置いてあるポテチを豪快に手掴みして、一口で全て食べた。ボリボリと音を鳴らしながら俺を睨む。
「まぁ、そこら辺までにしておけ。こいつ、全然照れる様子じゃないぞ」
幼乃は正しく俺の行動を分析した。が、彼女はとてもつまらなそうな顔をしている。
「え?つまんなかった?」
「ん?まぁ、思っていたよりもな。やっぱり、始めを言ったら、終わりを言わねばならんじゃろ」
それもその通り。北瀬の恋話は未だ現在更新中であり、日に日に物語が厚くなってゆく。そして、俺たちはその物語の最後を常に見ているので、彼の話は面白かった。終わりを知っていて、始まりを知ることができたから。
だが、俺の話は始まりはあるものの、終わりがない。この二人は始まりを知っていても、終わりを知らないから、物語が大体どのようなものなのかが見当もつかないのだ。
それを想像するから楽しいというのは俺みたいなタイプだが、どうもこの二人はそういうタイプではないらしい。
「そうだな。終わりは教えておくか」
「うむ。やはり、終わりは欲しい」
「じゃぁ、はっきりと言うが、俺と初恋の相手である生徒会長は付き合っていない」
「へー、付き合わなかったんだ」
「まぁな。俺もその人も、それらしい感情はあったかもしれないけど、それを言葉にして、その言葉を相手に伝えるということはしなかった。例え、どんなに遠くに行くことになっても。もう、逢うこともままならないだろうと分かっていてもだ」