「逢えない?それはどういうことだ?」
北瀬は俺にそう訊いた。
逢えない。それは若干語弊がある。逢えないと言うより、逢うことができる可能性が限りなく低いということだ。
「彼女、海外に行ったんだよ」
「海外……?」
「そう、海外。彼女は前々から都会に戻るって決めてたんだ。で、出会った時からずっと、高校は都会の高校って決めてたらしいんだけど、親の仕事の都合で海外に行くことになったんだ」
彼女は小学生の頃、都会に住んでいた。都会は田舎よりも便利だし、夜も明るい。中学に入る前に親の都合で田舎に移ったが、彼女は高校こそ都会でと意気込んでいた。俺はその彼女の意気込みをずっと近くで見てきたから、彼女の努力は凄かった。彼女が成績優秀なのは、そのためでもある。都会の高校に行くことを親に許可させるために、常に学年トップを維持していた。
だが、彼女は秋ぐらいから学校に来なくなった。その頃は生徒会長の役職を引き渡す時期で、彼女がどうしても学校に来ないと行けなくなった。だが、彼女は学校に行くことを拒否し、その時に俺は彼女の境遇を知った。
彼女は都会に戻れなくなった。親の都合で海外に行かねばならなくなった。それはつまり、彼女の中学の二年間を否定しているようなもの。
彼女は、彼女の努力はしょうがないという一言で否定できるほど儚く脆いものだったのだ。
「なんか、可哀想だな。二年間の努力が無駄になるとか。流石にそれは辛いわ」
「うむ。この学校の三竦みは元々勉強できるって感じだが、彼女は努力の結果の天才だったわけか。それは堪えることなどできまい」
「まぁ、予想以上に凄まじかったよ。だって、彼女、リストカットまでしてたんだから」
「え?リストカットって……」
「そう、あれだよ。手首切るやつ」
つまり、彼女は自殺まで試みていたのだ。家に行った時、彼女の両親は彼女に一人で整理をつけて欲しいと思い、部屋に立ち入ろうとしなかった。無理にズカズカと入り込むのではなく、時間をかけてでも理解してもらいたかったのだ。だが、その思いは彼女にとって良い方向には向かず、彼女は苦しみから逃げようとしていた。だが、覚悟なく、彼女は躊躇していて、その時に俺は堂々と正面突破。つまり、部屋に入ったのだ。
「えっ?それは色々とアウトじゃないか?女の子の部屋に男の子が無理矢理入るとか。犯罪でしょ」
「そうだな、軽く犯罪を犯したな。あの時、ドアに鍵がかかってたから、窓から侵入した」
「そのまま、イチャイチャシーンに……」
「なってねぇよ。なってたら、とっくのとうに俺、女に飢えてるような男になってねぇし。余裕のある男になってるわ」