こんな奴でも青春したいっ‼︎   作:Gヘッド

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侵入

二階にあった彼女の部屋に、窓から侵入した。窓は閉ってはいたものの、鍵はかけられていなかったため、侵入はできた。

 

窓に足をかけて、部屋に入る。窓のすぐ下にはベッドがあって、足に何かが触れた。俺は窓から中を覗くと、そこには引きこもりの例の彼女がいた。彼女は俺の顔を見るとひどく驚く。そりゃ、窓から無許可で入ったんだし、非常識で無法者な俺しかしない行為。そもそも女の子の部屋に男が押し入る時点で色々とヤバい。

 

普通の女の子ならすぐさま悲鳴をあげるだろう。金切り声のような不快感のある声を叫ぶはず。だが、彼女は驚いた次の表情が、どんよりとした後ろめたい顔だった。

 

「何で来たの?」

 

冷たく、俺を追い払うかのようにそう言葉を投げる。来てほしくなかった、いや、見てほしくなかったというような思いが顔に出ている。

 

もうこの時、俺は彼女のある光景を目にしていた。右手でカッターを握りしめるながら、左手首にその刃を入れるという直前だった。現実に絶望しながらも、死に対する恐怖で手が震えていた。涙がカッターの刃を錆びさせる。

 

何て言葉を彼女に投げかければ良いのか分からなかった。見苦しい彼女の姿は俺の知っている彼女じゃなかったし、だからと言って冷たい言葉を口にすれば彼女がどんな狂行をするか分からなかった。

 

ここで、彼女を刺激せずに優しく彼女を諭すか、彼女に強く喝を与えるべきか。二つの選択が俺の目の前に現れた。

 

そして、俺は選んだ。一つの選択肢を。

 

「何やってんすか?ほら、学校、行きましょーよ」

 

俺が選んだのは、そもそも見てないふりをするという第三の選択肢だった。目の前のことなんてどうでもいいから、ともかく俺は彼女を学校に行かせたいと思っていた。

 

「今日、生徒会長の引き継ぎ式ですよー。だから、ほら、あんたがいないとそもそも式になんねーから」

 

俺は彼女に手を差し伸べた。だが、彼女はその手を握ることを拒んだ。右手にはカッターナイフ、左手は自らの血で濡れている。

 

「もう、いいわよ。学校だなんて」

 

学校に行きたくない。都会の高校に行くために頑張って勉強をしていたのに、その努力が無駄になったので、その反動か学校に嫌悪感を彼女は抱いていた。そもそも、別にそんなに学校が好きってわけでもない彼女にとって、もう学校なんて行く価値のないものとなっている。

 

それでも、俺は彼女の前に手を出した。

 

「いや、行かねーとみんな迷惑するんすよ。学校は嫌いだけど、他の奴らが迷惑している姿見るのはなんつーか、色々と後味が悪い。多分、あんたを連れて行けるのは俺だけだって思って来たんで」

 

彼女の昏い瞳は俺をじっと見る。そして、ふっと笑った。

 

「変わったね。そういう柚子木くん、学校行くの楽しそうだよ。学校好きになったんじゃない?」

 

「あんた、話題を変えないでくださいよ。とにかく、今日は学校に来てもらうんで」

 

俺がそう言うと、彼女は手に握っていたカッターの刃の先を俺に向けた。

 

「行かない!絶対に行かない!」

 

必死に、頑なに拒む。彼女は受け入れない。現実を。

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