今回は結構意味深回ですね。
まぁ、そんなところです。
俺たち三人は駅に向かっていた。俺と倉本の二人は従者のように”女王”赤石の後ろについている。さっきのカラオケで赤石の怖さが十分に感じたので、赤石の前で歩こうだなんてできない。滅相も無い。俺たちは彼女の手のひらで踊らされる人形であるんだよ。どうせ。
俺たちがとぼとぼと赤石の後ろを歩いていると赤石が俺たちに「どうした?」と聞いてきた。いつもみたいに冷徹な顔で。その顔は何を考えているのだろうか。俺たちを愚弄して蔑さげすんでいるのでは?と思ってしまう。
俺たちは彼女に「何でもないよ。気にしないでくれ」と言った。
軽いため息をついた。その本意はカラオケ代が無駄だったという意味で。
俺と倉本がロウテンション(low)だったために赤石も少し心配した。それを察した俺は赤石に心配させないように明るく振る舞った。
「そ、そういえば、委員長って中学の時って何部だったの?(地味に知らない)」
「私?私は部には入っていなかった。けど、生徒会には所属してたわ」
せ、生徒会⁉︎さすが赤石だな。やっぱり何でも出来るね。
「あれ?確か今学期に生徒会に入るための選挙があったような……。委員長は入んないの?生徒会」
俺がそう言うと赤石はぎこちない笑みで微笑み返した。いつも笑わない赤石がその時にぎこちない笑みで俺に微笑んだ意味はその時の俺にはわからなかった。
「まぁ、大学受験があるし生徒会には入らないようにしているんだ」
「なんだ。選挙には出ないんだ。もし出るんだったら俺、投票してたけどな」
赤石は顔を赤くした。が、すぐに冷めた。そして赤石はこう言った。
「たった一人じゃ何も変わらない。もう選挙はこりごりだ」
俺には彼女が言った言葉がとても重く、冷たく、暗い感じで聞こえた。まだ、夏から秋に変わる頃なのに彼女だけは冬だった。
俺と赤石が話していると倉本が俺たち二人の肩に手でポンポンと叩いた。
「なぁ、今どこに向かっているんだ?」
「いや、今から帰るんだよ」
こいつ今の話を聞いていたか?絶対、歩きながら寝てただろ!
駅に着いた。俺たち三人は同じ方向なので同じ電車に乗った。俺たちが乗った車両には他に数人、人がいるだけだった。
いつもなら学校に行く時は車窓から街が見える。が、今乗っている路線は地下鉄なので、電車が走っている時の車窓からは真っ黒の壁と線のように続くライトしか見えない。
倉本、俺、赤石の席順で座っていた。倉本は席に着くなり下を向いて寝る体勢に入った。そして、少し経つと寝た。俺は寝た倉本の顔の前に何回も手を出したり、引っ込めたりしたが起きる気配が一切ない。
俺が倉本は起こせないと悟って赤石の方を見ると、赤石はずっと俺を見ていた。
「なんだよ。ずっと見て」
「いや、いい仲だなって思って」
「俺と倉本が?」
俺がそう言うと赤石は大きく頷うなずいた。
「やめろ。俺と倉本はそんな仲じゃない。それに俺には……」
「なんだ?白浜さんか?」
「い、いや、ちげぇーし……」
赤石は俺を見ている”ふふっ”っと笑った。その時に、電車は赤石が降りる駅に止まった。
「君みたいな人があの時にいてくれたらどんなに楽であったろうかと私は何回考えただろうか」
赤石はそういうと電車を降りた。電車の扉が閉まる。赤石は俺たちに手を振った。そして、電車はその駅を後にした。
どんなに楽であったと私は何回考えただろうか。
あの言葉がとても気になる。言葉の意味が。
俺は寝た倉本を見た。爆睡している。
……さて。どうやって家まで帰らせようか。……おんぶで送ってやるか。
俺は倉本の家までおんぶで送ってやった。