今回は赤石さんの過去を暴あばいた回です。
安平は何を知っているんだろうか。同じ中学だったとはいえ、安平は新聞部で、赤石は新聞部ではなかった。つまり、二人にはあまり接点がない。
それでも、俺は安平に聞いてみたかった。当時の状況を。中学がどんなであったかを。
安平はすうっと息を吸うと大きく息を吐いた。そして、静かに語った。
「あの頃はいつだったかなぁ〜、私が中三の夏ぐらいかなぁ。その時、私は新聞部にいて、彼女は生徒会にいたんだ。赤石さんは真面目で優しくてなんでも出来る副会長だった」
「赤石が副会長……」
「そう、副会長だった。彼女が生徒会に入った理由、それは生徒会長に惚れてたんだよ。生徒会長は顔立ちがとても良くて、頭もいいし、カリスマ性もあった。」
「へぇ、生徒会長と副会長の恋沙汰こいざたねぇ。……で、どうだったの?付き合ってたの?」
「うん。付き合ってたよ。その夏までは」
その夏までは?それは別れたのか?赤石の方から惚れてたのに?
「二人は仲のいいカップルに見えた。いや、実際そうだった。で、その時、学校中である噂が話題になってた。それは生徒会長は女遊びが激しい女誑しおんなたらしだって事」
「でも、それって噂でしょ?」
「うん。噂だった。でも、それが噂かどうかを調べてしまった人がいるの」
安平はそう言うとうしろめたそうに安っぽい笑みを浮かべた。
「それで、本当だったから別れたってわけ?」
「そう。それで別れた」
……まぁ、確かにそれなら心は傷つくかもしれないが、赤石は何故生徒会をそこまで拒こばむのだろうか。
「でも、それだけじゃなかった。赤石さんの苦しみは」
「それだけじゃない?」
「まぁ、彼女は生徒会長に裏切られて平静を保っていた。だから生徒会でちゃんと仕事もしていた。その頃、生徒会長には護衛隊のような人たちがいた。そしてその人たちは赤石さんを嫌っていた。護衛隊の人たちは今だ!って思ったんだろうね。赤石さんの悪い噂を流し始めた」
今まで好きな人を独占していた赤石に攻撃したのね。生徒会長の罪を赤石に植え付けるために。
「彼女の噂は瞬またたく間に学校中に広がった。赤石さんが生徒会長を貶おとしめた、赤石が生徒会の実権を握っているとか色々流れた。そんな噂が流れれば流れるほどみんなが抱いていた赤石さんへの信頼は不信になっていく。人は誰が何かをすれば自分もそれに従ってしまう。それで、いつしか校内で赤石さんの味方はほぼいなかった。いなかったわけじゃない。でも、学校は群れだから群れに逆さからうと自分にも被害がくる。だから誰も何も言わない」
俺はそれを聞いた時、赤石の言葉が初めて理解できた。
たった一人じゃ何も変わらない
あの言葉はこれほどまでの事が生んだ言葉なのか。たった一言に辛い思いがたくさん詰まっている。
俺は赤石を”天才”の二文字にしていた。しかし、今、彼女はその言葉は似合わない。”孤独と戦った女の子”、そっちの方がよく似合う。
「で、その後、生徒会は続けたんですか?」
「いや、やめたよ。三年は生徒会をやってなかったらしい」
まぁ、そうでしょうけども。
キーンコーンカーンコーン‼︎キーンコーンカーンコーン‼︎
学校の鐘がなった。安平は「じゃぁ、私は昼休みがあるから」と言うと屋上から降りていった。
「俺も教室に戻ろう」
俺はそれをドアを開けて階段を降りていると廊下を赤石が歩いていた。
あっ、赤石だ!
その姿が目に入った瞬間、体が勝手に動いた。
「なぁ、赤石」
俺は赤石を呼び止めた。そんな赤石は俺の方を振り返った。
「何だ?」
いつものように変わらぬ表情である。
「その、俺と今度の日曜に遊びに行かね?」
俺がそう言うと彼女は「ああ」と返事をした。頬と耳の先が赤くなっていた。彼女は下を向いた。下を向いていたために表情がわからなかった。