昨日は大変な一日だったと思いながら夕飯の料理を作るために買い物をしていたとき、ものすごい悪臭を放つ存在が近付いていることに気付き、逆走する。
「まっ、待ってくれえぇ~っ!」
お爺ちゃんの声に気付き、まさかと思いながら後ろに振り返ると痛烈な悪臭に鼻を摘まみ、全速力で走り出す。地面とぶつかるギリギリまで大きく足を開き、商店街の出口まで向かう。
あのまま、あそこに居たら攻撃していたわね。
「あら、切さん?こんにちは」
「こんにちは、かすみさん」
おっとりと穏やかな呼び掛けに視線を向け、ほんわかと空気のみ、安心できる香りを纏うかすみさんと挨拶を交わし、向こうは悪臭がするから今はやめるように伝え、私は静かに溜め息をこぼす。
お爺ちゃん、また何かやらかしたのかな。
あそこまですごい臭いを放つなんて尋常な事じゃないし、早乙女君も何かを企んでいるはずだ。あかねさんが止めてくれると助かるんだけど。
「困ったわねえ、お夕飯のおかずが買えないわ」
「私もそうだった…」
逃げずに我慢……するのは無理な臭い。
「ん?んー、大きなパンダ」
「あらあら、早乙女のおじ様すごいわねえ」
「すごいで良いのかな」
大きな闘気を具現して巨大化したお爺ちゃんと対抗し、早乙女玄馬は殴り合う最中、商店街の中に視線を向けると生身のお爺ちゃんと互角に渡り合う天道早雲の姿も見えた。
闘気を巧みに操りながら戦っている。
「流石は無差別格闘流の開祖だね」
スンと臭いを嗅いでも局所的な通り雨で臭いが消えたらしく、私とかすみさんは商店街のお肉屋さんに買い物に向かうために歩き出す。
「切さんのお家は今日何を作るの?」
「コロッケを作ろうかなって、かすみさんは?」
「今日はハンバーグを作るつもりよ」
「良いね。男の子の大好物♪︎」
そう話しながら天道早雲の技を見る。
大胆不敵且つ油断大敵な早乙女流と違って、基礎を徹底して極める古流格闘技の動きだ。あかねさんの多用する蹴り技もアレなら鍛え上がるわけだ。
「無差別格闘天道流、爆破旋風脚!!」
下段から竜巻の如く舞い上がる怒涛の蹴りがお爺ちゃんの小さな身体を滅多打ちにする。が、彼が蹴っていたのはお爺ちゃんの用意していた身代わり丸太────。
「おじさん、上だ!」
「お父さん!」
「今さら遅いわ、早雲ッ!!」
「無差別格闘天道流究極奥義、飛竜断絶脚!!」
バク転するように繰り出された二連続の蹴りはお爺ちゃんの身体に二本の真空波の衝撃を叩きつける。ただの脚力でカマイタチを起こすなんてすごいわね。
「でぇははははっ!その程度でワシを倒せると思ったか!元祖無差別格闘流のワシを嘗めるでないわ!」
これは、長引きそうかな。