「校門で吹っ飛ばしたお前が糸逢の彼氏だと?」
「如何にも僕が切君の彼氏だ!交際期間6ヶ月!毎週土曜日にデートを重ねている!貴様のようにぽっと出の男が入り込める隙間は存在しない!」
そう九能先輩は糸益に宣言すると教室中から「毎週土曜日にデートだって」「九能先輩、毎日押し掛けてそう」「実際、毎日家に来てるぞ」「ああ、やっぱりそうなのね」とヒソヒソと話し合う声が聴こえる。
……恥ずかしいわけじゃないけど。
私は今すぐ顔を覆い隠したい気持ちを押さえながら糸巻きに丸結びの家紋を背負った羽織を脱ぎ、着物と袴姿になった糸益の視線は九能先輩に向く。
「殺す前に名乗っておこう。オレは
「剣術被れではない。僕こそ切君の彼氏に相応しい九能帯刀だ。九つの才能に、刀を帯びると書いて、九能帯刀だ。貴様に決定的な格の差を見せてやろう!」
そう言うと九能帯刀は懐に手を差し込み、ゆっくりと一枚の紙を取り出して糸益首に突き付けた。他のクラスメートや教師も紙を覗き込む。
「これぞ最愛の幼なじみと判明し、直ぐ様交際を申し込み、彼女にOKを貰った男の証だ!!」
まるで、水戸黄門の印籠のごとく九能先輩は私と彼の名前を書き込んだ婚姻届を突きつけ、気恥ずかしさに頬を赤らめてしまう。
「流石は九能先輩だぜ、行動力バカだ」
「よくやるよな。まだ17歳だろ?」
「待てよ?九能先輩の誕生日って」
「来年ですぐだな」
「フッ。来年には学生結婚してやるわ!!」
「……御託はそれだけか?」
九能先輩の宣言を遮るように繰り出された糸益首の虎形拳の手技を紙一重で躱し、九能先輩は木刀を振るい、素早く間合いを広げる。
流石に近くで見るわけにも行かず、九能先輩の手を掴み、槍を引き伸ばして校庭に繋がる道を作って滑り降りるも糸益首は平然と飛び下りてきた。
流石に予想外すぎる速さかな。
「糸逢切を此方に寄越せ」
「断る。僕の彼女は最愛だ」
「ちょっと恥ずかしいかな。それは流石に」
そう言いつつも槍を構えようとする私を手で制止し、九能先輩は糸益首を見据える。本気の顔付き。私の問題なのに踏み込めなくなってしまった。
「九能先輩、負けないでね?」
「無論だ!愛に勝る物など存在しない!!」
「愛などいつでも作り出せるものだ」
大胆不敵にそう九能先輩は叫び、糸益首はそれを否定して九能先輩を対して構えを変えた。
やっぱり、九能先輩はかっこいいね。