「でえぇいっ!!」
「丸見えだ。馬鹿が」
裂帛の声を上げて剛刀「風林火山」を真っ直ぐ唐竹に振るい、糸益首の事を斬り付ける九能先輩の凄まじい剣戟を、糸益首は手の甲や手のひらを利用し、最低限の動きで木刀を容易く往なす。
───刹那、ネジ巻き状の掌打が空気を抉る。
「(あれは、螺旋掌?)」
糸色流とは違う武術。
いや、あれも糸色流の一つかもしれない。少なくとも私の知らないということは糸益家の独自に研鑽を重ねて編み出した流儀と考えるべきだろう。
九能先輩の基礎を忠実に鍛え上げた剣道の面打ちや小手、胴では糸益首を捉えることは出来ない。部活動の剣道では倒すことも捕まえることも出来ない。
「九能流旋風剣!!」
「見えていると言った筈だ!」
「フッ、貴様は見えておらんわ!!」
高速の突きを繰り出す九能先輩に糸益首が怒声を上げ、頭を握り砕こうと右手を突き出したその時、木刀の握りを変え、九能先輩は柄頭で彼の額を殴り付けた。
見事にカウンターが決まったと確信した。
だが、糸益首はのけ反るどころか更に踏み込み、木刀を握る九能先輩の腕を頭突きで叩き落とし、二度目の頭突きを叩きつけ、九能先輩を蹴り倒す。
「ぐっ、おのれッ…!」
おでこから血を流し、片膝をつく九能先輩にハンカチを渡しながら彼を庇うように如意棍槍を引き伸ばし、静かに糸益首を見据える。
九能先輩は、軽い脳震盪を起こしているみたいだし。ここから先は私の役割だ。
「オレの勝ちだ。来い、糸逢切」
「分からないわね。どうして、そこまで私に固執するのかも怪しく気に入らないかな」
「なら、お前も力付くで奪うまでだ」
パキッ、ゴキッ、と彼は指の骨を鳴らす。
流石に素手の力じゃ勝てないかな。
そう考えた次の瞬間、空気を割く手技の速さに目を見開き、槍の柄を盾に使えば握り砕かれる可能性さえある。いや、骨まで砕かれるかな。
……ただ、彼の動きは技ではなく掴みだ。
握力に任せた力技であり、格闘技じゃない。
「ルオアッ!!」
「ッ、流石に家宝を砕かれるのは困るかな」
槍の柄を戻してスカートの中に隠し、ゆっくりと竜頭拳に構えると糸益首は動きを止め、私の構えをジロジロと観察し始める。
やっぱり、イヤな視線だ。
「そんな小さな拳でオレを殴るのか?」
「……馬鹿にしてるのかな。二重の極みを打てる程度には鍛えた自慢の拳ではあるよ」
「そうか。なら、その自慢を砕いてやる」
そう言うと彼は再び動き出す。
彼の手首を打ち、関節を外す。が、直ぐに関節を嵌めて私の事を攻撃してくる。流石にっ、これは予想外すぎるかな!