「響良牙?」
「また転校生かな?」
「五人は来すぎじゃないか」
教室で机を近づけて食べながら今朝の出来事を早乙女君やあかねさん、句君にも話してみる。あかねさんと句君は心当たりはないらしく、他のクラスメートも響君の事は全く知らないみたいだ。
誰かと約束しているなら名前を聞いておけば良かったかな。そう思いながら昨日の夜に仕込んでいた唐揚げを句君に分けてあげる。
「ところで何故重箱なんだ?」
「お弁当ってこういうものでしょ?」
「運動会とかそういう場合だな」
「でも、美味しいわよ?」
そう言って私の作った卵焼きを褒めてくれるあかねさんに「フフ、ありがとう。卵焼きは自信作なの♪︎」と伝えて、たまにやって来たクラスメートにも重箱の中身を分けつつ、のんびりとお昼を過ごす。
響君もご飯を食べているのだろうかと考えていたその時、おにぎりを口に頬張ったまま、ポンと手のひらを打つ早乙女君に視線を戻す。
「思い出したぜ、昔通ってた学校の同級生だ」
「まあっ!じゃあ、早乙女君に会いに?」
「旧友を訪ねてきたわけか。良いヤツだな」
「乱馬ってお友達想いだったのね」
「へへ、そんなんじゃねえって」
早乙女君は照れ臭そうに笑い、響君が訪ねてきてくれた事を純粋に喜んでいる。私もお引っ越しした先までお友達が会いに来てくれたら嬉しいです。
「しかし、良牙がなあ」
「強いならオレも勝負したいが良いか?」
「別に構わねえんじゃねえか?アイツもわざわざ会いに来てくれたぐらいだ。句みたいに強い格闘家がいるって知ったら燃えるだろうぜ」
「そうか。なら、オレも頑張って殴るか」
「「それは、ちょっと違うんじゃ……」」
私とあかねさんの言葉に句君は不思議そうに首を傾げつつ、袖口を弄っている。やっぱり本条気は大鎖鎌の流派ですし、鎖分銅の彼は戦い難いのかしら?
お父さんにお願いして、大鎌を送って貰うのも考えてみたこともある。だけど、小鎌さんと句君は普通の大鎌ではなく別の大鎌を探している。
それは、家宝の大鎌だそうだ。
糸色双家だと大鉾と十文字槍。
私の生まれた家だと結婚した際、しとりお婆様に片鎌槍の宝槍「如意棍槍」を戴き、少し前まで糸色家の当主に預け、なにやら大変な出来事に巻き込まれていたらしい。
お父さんは教えてくれなかったけど。次期当主候補として糸色の名前を名乗る以上、相応の覚悟を持たないといけないのも事実だ。
「すごい考え込んでるわね」
「そんなにオレ達が勝負するのが不満なのか?」
「いや、混ざりたかったのかも知れねえぞ」
「……そういうわけじゃないよ?」
ちょっとだけ悩んだだけです。
一方、その頃の2年E組────。
「うまい!美味いぞおおおっ!!流石は糸色家の息女、出会って僅か二日目にしてこの僕の好みを熟知した味付けばかりじゃないか!」
「くっ。ちゃんとお弁当箱を見るべきだったわね」
「あら、美味しい卵焼き」
五段重ねの重箱を囲み、私と九能君、なびきは切さんの作ってくれたお弁当を食べていた。ちょっと重いとは思ってたのよね。
まさか、本当に重箱をお弁当にするなんて糸色家の箱入り娘はこんなのばかりなのかしら。あ、おにぎりに梅干し入ってる。