調理実習でクッキーを作った私達の元に颯爽とやって来た九能先輩に「あ~ん」と星形のクッキーを差し出すと彼は嬉しそうに口を広げたその時、九能先輩は黒バラに包まれるように地面に倒れ伏す───前に胸で受け止める。
「おほほほ!乱馬様、貴方の小太刀ですわ!」
「げっ!?こ、小太刀!?」
「小太刀さん、流石に危ないかな」
「あら、切さん、ごきげんよう。お兄様ったらまた切さんに抱きついていますのね」
やれやれと呆れたように溜め息を吐き、素早くあかねさんのクッキーを奪い取る小太刀さんの行動にいち早くシャンプーが阻止し、あかねさんの死守する。
「いきなり何するね!あかねのクッキー取るのはダメと分からないか!」
「シャンプー…!」
あかねさんは自分のために怒ってくれたシャンプーに嬉しそうに笑うも「そのクッキーを食べたらお腹壊すね!今すぐやめるよろし!」と続けざまに言われ、ムッと怒った顔に変化した。
まあ、そういう反応にはなるかな。
そんなことを思いながらクッキーを奪い、奪い返す行為を廊下で続ける三人に取り囲まれた早乙女君は代わる代わるにクッキーを口許に突き出され、必死に、ものすごく必死に三人のクッキーを避けている。
「句君も食べる?」
「ありがとう。うん、コーヒー味だ」
「九能先輩もどうぞ」
「いただこう。ほう、ヒトデか」
「それは星かな」
サクサクと私の胸に頭を預けたままクッキーを食べ始める九能先輩に苦笑いを浮かべつつ、あかねさん、シャンプー、小太刀さんの攻撃を掻い潜り、とうとう早乙女君は逃げるために走り出してしまった。
「フッ。早乙女乱馬め、惚れた女の子のクッキーすらまともに食えぬとは軟弱な腹だ。あかね君があれほど丹精込めて作ったというのに」
「早乙女君はツンデレというヤツかな」
「男のツンデレって需要あるのか?」
サクサクと私のクッキーを食べる句君と九能先輩は小鎌さんの分も食べ尽くしてしまいそうだ。……それにしても、九能先輩はいつまで私の胸に頭を乗せているのだろうかと小首を傾げる。
「九能先輩は胸が好きなの?」
「切君、淑女がそんなことを聞いてはいけない」
「え?うん」
いきなり真剣な眼差しでそう言ってきた九能先輩に驚きつつ、素直に頷いてクッキーを袋ごと持っていってしまった二人を見送る。
小鎌さんと天道先輩にも持っていってあげよう。
そう思いながら句君が予想以上に食べたから、少しだけ少なくなってしまった。あとでまた家庭科室を借りて作らせてもらおうかな。