クッキーを押し込み、食べさせる早乙女君の胃袋争奪戦は苛烈さを極め、九能先輩と句君、小鎌さん、天道先輩、魔女先輩は私のクッキーを食べつつ、三人のクッキーパンチを避ける早乙女君の姿を見つめている。
「乱馬君はバカねえ。あんなの食べれば直ぐに解決する話じゃない」
「バカはお前だ。天道なびき、僕の妹が普通の美味しいクッキーなど作るわけがないだろう。おそらく、しびれ薬か何かを仕込んでいる」
「九能ちゃん、私はバカじゃないわよ。現にあかねの手作りクッキーを必死に避ける乱馬君を見なさい。あかねは壊滅的に料理下手なのよ」
「なびきちゃんも酷いわね。まあ、そういうところも可愛いと私は思うわ」
「ありがとう、魔女先輩。私もこういう私が好き」
私のクッキーを摘まみながら観戦する先輩達に苦笑を浮かべつつ、小鎌さんは自分のクッキーを横からパクパクと食べる句君に怒っている。
二人とも仲良しかな。
そう思いながら逃げ続ける早乙女君が此方にやって来た瞬間、全員が其々の武器を突き出す。みんな、そこまでしてクッキーを食べさせたいんだ。
鎖分銅が早乙女君の身体に巻き付き、二本の鎌が足を固定し、木刀が支柱のごとく身体を縫い付け、魔女先輩の手が赤く光って早乙女君の下半身が石に包まれる。
「あかね、今ならいけるわよ!」
「ありがとうっ、お姉ちゃん!」
「待つね!乱馬は私のクッキーを!」
「乱馬様、私のクッキーをお食べなさい!」
「や、やめっ、もぎゃあああああっ!!?」
一人ずつ食べていれば防げたクッキーパンチを三人同時に受け、早乙女君はしくしくと泣きつつ、三人から供給されるクッキーを食べ続けている。
「うむ。男児たる者、女の子のプレゼントを断るなど言語道断。早乙女乱馬、例え変態妹だろうと己を好いている相手を無碍にするのはいかんぞ」
「九能ちゃん、こう言ってるけど。切ちゃんと付き合う前はあかねと乱馬君に物凄く付きまとって交際を申し込んでいたのよ?」
「浮気はダメかな」
浮気撲滅。許されざる行為。
惨滅すべし、浮気者。
「今は切君一筋だぞ、天道なびき!」
「そういえば、なびき先輩はいつんなったらオレの告白の件を答えてくれるんだ?」
「甘いわね、
「それだけでいいのか?」
「あー、えと、なびき」
「なに?小鎌ちゃん」
「ウチの愚弟は冗談とか通じないからマジで囲い込まれて逃げられなくなるわよ?」
「……そこまでなの?」
スンと天道先輩が真顔で冷や汗を流す。
句君は素直で良い子だと思うかな。