私の話した『残り六人の許嫁』の話題は九能先輩の耳にも入ってしまったらしく、ワナワナと震える手で私の両肩を掴んだ九能先輩は私を見下ろす。
「ど、どういうことだ。切君!」
「どうもこうも親の決めた事だよ。でも、私は九能先輩以外の誰ともお付き合いするつもりはないから安心していいからね?」
「そ、そうか、ならば良いのだが」
そう言って背伸びをして九能先輩の頭を優しく撫でて上げ、またお昼休みに会う約束を交わす私と九能先輩を見つめる小鎌さんは羨ましそうだ。
「羨ましいわ。ハンサムな彼氏とか」
「小鎌さんも彼氏作れば良いんじゃないの?」
「フッ、あの世紀末覇者を愛する男がいると本気で思っているのかしら?」
「隣町の友引高校のヤツならどうだ?」
「ともびき?」
初めて聞く地名に私達は小首を傾げつつ、句君が隣町まで何をするために行っていたのかを考える。食欲か強敵を求めてか、一体どちらだろうか。
「向こうに同じ名前のヤツが居るんだよ。ソイツがかなりの女好きらしくてな、風評被害で何人かがオレに文句を言いに来た」
それは、御愁傷様かな。
私と小鎌さんは句君の知らなかった悲話に哀れみを向け、下駄箱で上履きに履き替えていると視線を感じて下駄箱を開けるとお爺ちゃんが入っていた。
「やっほー」
「おはよう、お爺ちゃん。そこは壬生先生の下駄箱だから男の人の靴だよ?」
「なんじゃと!?うぉのれ、乱馬め!師匠であるワシの事を謀りおったな!」
「爺さん、タンマだ」
「なんじゃい!本条の小倅!」
「借りてた本、返すわ。参考になった」
「おーっ♪︎そりゃあ良かった、待っとれ乱馬!」
シュバッと消えるように早乙女君の事を狙って走り出したお爺ちゃんを見送りながら、小鎌さんと別れて句君に「どんな本を貸して貰ってたの?」と問いかける。
面白い本なら私も読んでみたいかな。
「ん」
「縄?」
「おう。逃げるなら捕まえるってヤツだ」
句君はお巡りさんか何かになるのかな?
でも、どういう意味なんだろう?
不思議に思いながら教室のドアを開ける前に、句君の手を引いた瞬間、ドアを突き破って現れた早乙女君はあかねさんとシャンプーと右京さんに、お爺ちゃんに追われて逃げていく。
「早乙女達は遅刻、っと」
「壬生先生、流石にかわいそうっす」
「ハハ、先生のお給料も可哀想だから」
哀愁漂う壬生先生はなんだか可哀想に思える。
しかし、私が無理に介入すると大変な事になりそうだから最後の手段にしておこうかな。うん、それが一番安全だと私は思う。