戟號を退けて勝利した筈の九能先輩は凄く不満そうに焼きそばを食べつつ、お爺ちゃんの持っている腕輪に僅かに視線を向けた。
「老師、その後生大事に持っとる腕輪は何だ」
「これか?コロンちゃんに貰ったもんじゃ」
「それは盗まれた家宝じゃわい」
食い違うお爺ちゃんとお婆ちゃんの二人の言葉に私は小首を傾げながら、どこかで見覚えのある腕輪を観察していると思い出した。
効果は、そう惚れ薬だったかな。
「そんなわけで、切ちゃんもワシと一緒に素敵なウェディングをしよおぉ~~~~っ!!」
「お断りします」
「やるか邪悪妖怪!」
私に飛びかかってきたお爺ちゃんは九能先輩の木刀で殴り飛ばされ、落ちてきた丸薬が早乙女君の口の中に入り、そのままゴクンッ…!と彼は飲み込んだ。
「げえっ!?の、飲んじまっ…!」
私の方を向く前に早乙女君の目をタオルで隠し、あかねさんとシャンプー、お好み焼きを焼いている右京さんに預け、九能先輩と場所を移動する。
足を挫かれたから、お姫様抱っこだけどね。
「九能先輩、いつもより近いね」
「うむっ」
少し気恥ずかしくて胸元を隠しながら旅館に帰ろうとしたその時だった。早乙女君がお婆ちゃんを抱き締めながら「コロン、もう二度と離さねえぞ!」や「これから幸せになろうな!」と叫んでいた。
「早乙女乱馬、まさか年上好きだったとは!」
「百歳差の恋だね」
そう感心する私達の左右と真上を駆け抜け、あかねさんとシャンプーと右京さんが無防備に教会に走っていた早乙女君の背中を蹴り抜いた。
まさに必殺の一撃だったと思う。
「フッ。優柔不断な男の末路だな」
「九能先輩は一筋?」
「当然だ!」
自信満々に答える九能先輩に私は満足げに頷いていると、句君を見ると目隠しをした天道先輩の周りをうろうろと歩き回っている。
どうやらお爺ちゃんの持っていたものが、天道先輩の口にも入ってしまったらしく、句君は小鎌さんに邪魔されて顔を見せることが出来ずにいる。
「勝ち取る愛より、偽の愛で良いのかしら?」
「ヌッ…」
「愚弟、アンタは守ることだけ考えていなさい」
そんなことを話す三人の会話に苦笑いを浮かべ、チラリと九能先輩を見ると「天道なびき、金の亡者も愛を
女の子は誰でも愛を
そう思っていたとき、視線を感じた。
「九能先輩、あっちに行こう?」
「なにかあるのか?」
「怪我に良い秘湯があるって」
「なんと有り難い」
……うん、やっぱり追いかけてきている。