残り一つ。
惚れ薬を持っているお爺ちゃんは虎視眈々と女の子を狙っている様子が見える。あの人のエッチな波動を感じ取るのは凄くイヤだけど。
【切君、頼みがあるのだ】【あの邪悪たる妖怪、八宝斎を倒すために人肌脱いでくれまいな】
「玄馬さんが私に頼み?あと人肌は、
そう言ってプラカードに文字を書き加えるとペコリと頭を下げきた。まだ手伝うとは言っていないんだけど。それで早乙女玄馬は良いのだろうか。
「早乙女君、先ほど婚約指輪を交換したばかりのお嬢さんに頼むのは酷だろう。せめて、乱馬君を女の子にして囮にするとか」
【己は何を言っとるか!】【大事な息子だぞ!】
「親父…!」
「でも、おじ様ったら乱馬が気絶しているときにお夕飯勝手に食べていたわよ?」
「おやじ?」
【パンダ分からないよ~ん】
うん、すごく仲良しだね。
そう感心していた次の瞬間、早乙女君の頭の上に腕輪が乗った。シャンプー、右京さん、あかねさん、お爺ちゃんとお婆ちゃん、早乙女玄馬と天道早雲も加わった攻撃に早乙女君は飲み込まれた。
「うぎゃあああああああっ!!?」
「酷い最期よ、早乙女乱馬」
ドタバタと殴る蹴るの暴行によって踏み荒らされ、ボロボロにされた早乙女君に哀れみの視線を向けつつ、飛んできた丸薬を掴み取る。
「ワシに寄越せ、切ちゅわあんっ!!」
そう叫んで突撃してお爺ちゃんを避けて、ジリジリと私ににじり寄るみんなに溜め息を吐く。こんなもので好きになって貰えて何が嬉しいのかな。
「はむっ」
ぱくっと丸薬を口に含み、ゴクンと飲む。
絶叫や雄叫びが聴こえる最中、唇を人差し指でなぞる。ちょっと苦いけど。良薬は口に苦しというから、そういうものなんだろうと私は考える。
「んむっ!?」
ぐいっと九能先輩の顔を掴み、キスをする。
驚いている顔は可愛くて、とっても良いかな。
「っ、はぁ…何ともないかな。やっぱり使う前から相手が好きだと効果無いみたいだね」
「き、君は、風情をだな」
「イヤだった?」
「嫌ではない!ワンモアだっ!!」
そう言うと私の顔に手を添えた瞬間、九能先輩は鼻血を出して倒れた。普段はズンズンと攻めて来るのに、守りになると弱いよね。
「ぐ、ぬおぉ……」
「九能ちゃん、どうかしたの?」
「……そうね、糸色はキスに於いても最強かしら?」
いや、元々私は分家筋だから俗世の事をそこそこ知っているだけだし。当主様は夫と出会うまで女学院に通っていたから違うんじゃないかな?