天道道場をお借りして、軽くストレッチや型稽古を行う私の事を見つめる早乙女君と目が合う。何かしたかな?と思いながら剣訣指(人差し指と中指を立てた刀印に似た拳種)のまま倒立腕立て伏せを繰り返す。
「なあ、糸色って何流なんだ?」
「あ、それあたしも気になってたのよね」
剣道の鎧に向かって手刀を打ち込んでいたあかねさんも私の方に向き直り、何処かワクワクとした雰囲気で二人とも聞いてきた。
どう答えようかと考えながら倒立を止めて、ゆっくりと姿勢を正して正座に座り直す。
「何流かと問われれば糸色流古武術かな。もっと正確に言えば『
「でも、あの時私の手首や脇腹を折りに来た技は?」
「ああ、それは破傀拳です。人を
「……じゃあ、あのまま組みに行っていたら私の関節は脱臼していたわけね。下手に飛び込まなくて良かったと思うべきなのかしら?」
「関節外しの技ってわけだな。句や小鎌のヤツも同じヤツを使えるのか?」
そう言って私を見る早乙女君の目は強い相手と戦える事を純粋に楽しんでいる目付きだ。しかし、あの二人が修めているのは本条流大鎖鎌術であり、私のように雑食的にやっているわけではない。
「あの二人は別だよ。私も本来は違う技を使うし」
「……手加減してたの?」
「ううん、普段は破傀拳に頼っているだけ。本来の流派はどっちかと言えば槍術だから」
「なんでぇ槍使いだったのかよ」
槍使い。
うん、確かに言い方ではそうなんだろうけど。
私の使っている如意棍槍は多鞭系の武器とも言える代物であり、お父さんに授かった伸縮自在の槍も宝槍「如意棍槍」の仕組みを利用した業物のひとつだ。
「切ちゃん、悪い。遅くなった。乱馬もあかねちゃんも遅くなって悪いな」
「オレは気にしてねえぞ。それより句も素手で戦えるのか!」
「戦える。いや、戦おう、乱馬」
「へっ。そうこなくっちゃなあ!」
男の子ってじゃれ合うの大好きですよね。
そう思いながら眺めていると、いきなり道場の戸を開けてパンダが入ってくるのが見えたかと思った瞬間、「ばかもぉ~ん!」と書いた立て札を構えてバケツの水を早乙女君に浴びせた。
「テメェ、クソ親父がなにしやがる!!」
「わあ、女の子になった…!」
「え゛っ…あ、句!こりゃあれだ!手品だぞ!」
慌ててフォローしようとする女の子に変わった早乙女君を見下ろしていた句君は天井を仰ぎ見るように見上げ、静かに溜め息を吐いた。
あれ?思っていたより反応が薄い?
「乱馬、
「おまえもって、まさか!?」
「オレの姉ちゃんもそうだ」
「「いや、そっちかい!!」」
東京の人って面白いなあ。