私の事を『特異点』は待っている。
その言葉に戸惑い、少しの不安を抱きながらカランコロンと音を立てて境内を歩き、中国雑技団の天幕を見下ろす高地に座る人影を見つけ、また歩く。
カランコロンと草履が鳴る。
九能先輩と夏祭りに来たかったけど。部活を頑張る九能先輩も素敵だと思う。
「遅れた、かな?」
「いや、そんなに待っていないさ」
魔女先輩の様に少し不思議な雰囲気の女の人が、くるりと振り返って私の目の前に着地する。ローファーが砂利を踏む音が聴こえる。
「糸色と会うのは初めてだけど。かわいいね」
「ありがとう?」
「お礼を言えるのは良いことだね。此処で君の事を待っていた理由を伝えよう。ちょっと蛮竜が必要な事件が起こりそうでね、手伝って欲しいんだよ」
「分かった、受けるよ」
「あら、即決だね。ありがとう♪︎」
蛮竜が必要ということは糸色家にも関わる事態だと思うし。正直、私より当主様にお願いした方が億倍安心できる気がするんだけど。
いや、過信はダメだって糸色妙様が言っていた。
「ああ、自己紹介してなかったね。私は
「糸色切。色づく糸を切ると書いての糸色切」
そう言って握手を交わす。
格闘技をやっている手じゃないけど。
どこか不思議な気配を感じる。
「静海ちゅわあぁ~~~~ん!!!」
「切ちゅわあぁ~~~~~ん!!!」
「残念♪︎バーリア!」
昔、九能先輩や他の友達とおにっこしていたときに、両手を交差させていた子も居たけど。まさか本当にバリアを出せる人がいるなんてビックリした。
「一応、肩書きを名乗ると友引高校1年4組在学、現役女子高生超能力者の乙津静海ちゃんだぜ♪︎」
「超能力者…!」
「ハッ!そこにいるのは先程のお姉さん!!」
「あたるちゃん、あたるちゃん」
「なんだい、静海ちゃん♪︎」
「う・し・ろ♪︎」
「うしろ?うしろおぉおおおっ!!?」
電撃とビンタを受け、また倒れた。
「えと、大丈夫?」
「
彼に左手を差し出した瞬間、なぜか一人で立ち上がってガックリと肩を落とした。一体、あの人達はなにがあったのかしら?
「へえ、あたるちゃんが引くなんて珍しい」
「珍しいの?」
「えぇ、事あるごとに女の子をナンパする彼が引いたのは左手の薬指が理由かもね」
「……フフ、九能先輩のおかげだね」
こんねまくめた好き、九能先輩さなげるぞ。
好き、好き、しゃらー好きっ。
「おお、桃色の波動を感じるぜ。YOU、さては燃える恋しちゃってるね♪︎」
【概要用語解説】
本作の単語や転生者に関する事を解説します。
【
本名「乙津静海」。
年齢は16歳。身長164cm。
「うる星やつら」の優しく幸せな一般家庭に恵まれて生誕した転生者。友引高校に通う女子高生であり、超能力(念動力や瞬間移動など)を使える。自分は問題児まみれの友引高校では「常識枠」だと思っている。
少し妖しい雰囲気を纏っているが、あくまで「雰囲気を作っている」だけであるため、悪さをしているわけではない。実は諸星あたるに多少なりとも好意はある。が、友達でいる事を選んだ。
転生する際に選んだ「特典」は「超能力を使ってみたい」と「好きな人に会ってみたい」。
一つ目の特典「超能力を使ってみたい」は文字通り、乙津静海を超能力者に作り替えた。だが、それは彼女の平穏を奪うことでもある。眠れば予知夢を、望めば品物が、彼女は「遣り甲斐」を奪われている。
二つ目の特典「好きな人に会ってみたい」は諸星あたるに出会えること。しかし、「出会える」と「付き合える」というものは別であり、彼女が望めば世界は彼女に諸星あたるを与える。
だが、其処に彼の愛は存在しない。