魔女先輩と似た感じの女の子、乙津静海と別れた私は夜店の料理というものを食べつつ、町を跨ぐだけでこれだけ味付けも変わるのかと感心する。焼きそばの味付けも前に食べたものとは違う。
「隣、良いかな?」
「んっ。……どうぞ」
境内に設置されたベンチに座る私の隣に腰掛けた壬生先生に驚きつつ、よく私の事を気に掛けている先生の心遣いには感謝している。
「奥さんはどうしたんですか?」
「あそこで水風船を取っているよ」
「水風船?」
「ヨーヨーの様に遊ぶ風船なんだよ。こうして、ゴム紐を括り付けて、手首のスナップを効かせて振れば簡単に跳ねる」
「へえ、変わった玩具だね」
そう感心する私の目の前を横切る金色の蝶々を鋭く疾い左拳のリードブロー。いわゆる左ジャブが撃ち抜き、一瞬にして蝶々が霧散する。
いや、違う。
今のは粉末状の何かだった。
「(今のパンチって、本当にジャブだった?)」
そう思いながら夜店でマスターが売っていたコーヒーを飲み、ゆっくりと口許をティッシュで拭く途中、壬生先生は微笑ましそうに奥さんを見つめている。
「壬生先生、楽しそうだね」
「楽しいよ、僕は色々と楽しんでいる。君達との学校生活も楽しくて仕方ないし、奥さんとデートするのも楽しくて幸せだ」
「じゃあ、あの空気銃を構えた奥さんも?」
「糸色さん、バイオレンスとデンジャラスは同意義だと僕は思っているんだ。見てくれ、妻が僕に向ける嫉妬心を。とても興奮する。暴力系ヒロイン万歳」
よく分からない事を称賛し、コルク弾を受けた壬生先生の次は私に照準を向けてきたため、左手を掲げると直ぐに理解してくれた。
九能先輩、指輪は本当に厄除け効果ありかな。
きっと剣道部の主将として合宿に励んでいるであろう九能先輩に想いを馳せていると、不機嫌そうに顔をしかめるシャンプーを追いかけるアヒルがいた。
「あかねさん、早乙女君は?」
「知らないわよ、あんなヤツ」
「また何かあったの?」
「アイツ、あたしのぶーちゃんを蹴ったのよ!」
ぶーちゃん?と小首を傾げる私に差し出されたのは綿が抜け、布地がぼろぼろになったブタの縫いぐるみ。これぐらいなら直せるかな。
「はい。綿を詰て、背中を縫えば終わるよ」
「……あ、ありがとう!」
「フフ、良いよ。お友達だからね」
「うん!」
あかねさんとみんなの分を一緒に夜店の料理を買っていると小鎌さんがウサギの着ぐるみを着た変態さんに襲われているところが見えたかと思えば全力投球された岩石がウサギの男を吹き飛ばす。
すごい句君の剛速球だったね。