荒々しく掴み技と引っ掻き攻撃を繰り返す糸益首の攻撃を掻い潜り、彼の顔に向けて掌打を打つ。段々と痛みを感じ、手首に鈍い痛みが増える。
筋力差を考えれば当然だ。体躯も彼の方が上であり、私は身体を引き伸ばしたように掌打を打っているため、僅かに威力は分散している。
ハッキリと言えば破壊力に欠けている。
「どうした。もう終わりか?」
「終わりたいから負けてくれないかな」
そう言いながら私は痛くなってきた手を使わないために地面に突き立てていた槍の柄を掴み、ゆっくりと引き抜いて構える。
穂先は使わない。
「覇極流槍術だったか?オレには通じない」
「そう。じゃあ、貴方の負けかな」
コンと石突きで彼の額を押し、顎先を押し、胴体と四肢を繋ぐ関節に軽く突いて最後に鳩尾を突く。ほんの一瞬の出来事だけど。
今の突きを見えたのは何人かな?
そんな事を考えつつ、眼鏡を受け取るために九能先輩の立っている方に向かうため、糸益首に背中を向けた瞬間、怒気が吹き荒れる。
「待て、まだ終わっていないぞ」
「いや、終わりかな。だって、動けないでしょ?」
「動ける」
ギシリと関節の軋む音に私は溜め息を吐く。
「えんごうーじ。みぐさい」
コンと顎先を薙いで意識を刈り取る。
「それまでッ!!」
「はぁーっ、しんの。しゃらーさわぎかな」
「うむ、信州弁も可愛いぞ!切君」
「んえ?あ、……コホン、変じゃない?」
少しイライラとして言葉が戻った事を恥ずかしく思いながら九能先輩に聞けば「可愛いぞ!」と笑顔を向けてくれ、胴着の上衣を着せてくれた。
「九能先輩、何言ってるかわかんのか?」
「フッ。この九能帯刀を侮るなよ、早乙女乱馬。僕と切君は幼なじみだ、彼女の信州弁などとうに聞き慣れているのだ!!」
「あはは、いんとくせー」
「隠匿性?」
「馬鹿め早乙女乱馬、胡散臭いと言っているのだ。切君、僕の何処が胡散臭いのか教えて貰えるか?切君?切ちゃん、しほ!?何故顔を逸らすんだあ!?」
「九能先輩何したんだよ」
やいのやいのと騒ぐ二人を無視して、もう意識を取り戻した糸益首の傍にスカートを押さえて座り、悔しそうに顔を歪める彼を見つめる。
「オレの負けだ……残りは何人だ?」
「四人かな。多分、次はもっと強くて年上の男の人になるだろうし。かなり不安には思っているけど、好きな人と結婚したいからね。私は負けないよ」
「……そうか、応援しているよ」
そう言い残して彼は傷だらけの身体を無理やり起こして、帰っていく。多分、糸益家は彼を責めるけど、句君と小鎌さん、忍び達が助言してくれるはずだ。