糸益首の事を切り捨てず、その強さを高める事を選んでくれた妙様の御配慮に感謝の気持ちを抱きつつ、彼女のやろうしている事も知ることが出来た。
妙様の目的は糸色家の地位と権力を利用しようとする分家筋の縮小化。正確には糸色家の分家に婿入り、嫁入りしてきた人達の横暴さを正すためだそうだ。
付け加えて言えば私の身体に収まる『鍵』は本家の血筋の受け継ぐ物であり、分家筋に転移していたというのも異例中の異例であると教えてくれた。
「小鎌さんは知ってたの?」
「いえ、流石にそんな力が眠っているなんて知らなかったわよ。そもそもお伽噺でしか聞いたことがないわよ、地獄を開ける鍵なんて物はさ」
「オレには痣にしか見えねえけどな?」
「覗いてんじゃないわよ、愚弟ッ!!」
「リビングでやるなよ、じゃあ」
そこは句君の言葉が正しいかな。
私もリビングじゃなくて部屋にしておけば良かったと反省しながら、ついでに句君に借りていた『愛しい相手の縛り方』という本を返す。
メンタルケアの本だったけど。
中々に面白い内容だったし、かなり興味深いお話も幾つか載っていた。ただ、どうしてメンタルケアの本に緊縛術という時代劇の技法が?
そう不思議に思いつつ、小鎌さんに預けていた上着を受け取って袖を通す。見られて恥じるような身体ではないけど、やっぱり少しだけ恥ずかしいかな。
「しかし、問題は残りの四人だろ?」
「そうね。分家、元隠密、次はどの人間が来るのかが読めないわね。いや、むしろ絞りきろうとせず、このまま曖昧な状態を維持したい?」
「切さん、流石に考えすぎじゃない?」
だけど。そうとしか言えない状況ではある。
「……ところで、玄関のアレなに?」
そう言って話題を変える小鎌さんの指差す先に鎮座しているのは妙様に事情を話して借り受けてきた蛮竜が異様な妖気を発しているところだった。
意志を持つ妖器物。
その最上位に君臨する蛮竜は嫉妬深く遣い手と認めた相手が他の槍や薙刀を持っていると物凄く不満そうに鳴動し、自分の存在を訴えると聞いたことがある。
アレって全然眉唾の話じゃなかったんだね。
「イデデデデデデデッ!!?」
そんなことを考えていたとき、バチバチと青白い電撃を受ける句君の姿を目撃し、さっきまで触っていた自分の手とバチバチと雷に包まれる句君を見比べる。
えっ、なにあれ怖い。
「…………」
プスプスと煙の出る句君を恐る恐る見る。
「姉ちゃん、やばいぜ。筋肉が解れやがった」
「そ、そう、よかったわね」
タフネスさだけなら妙様より上なんじゃ?