「あの、九能先輩?」
放課後。
私は教室で荷物を鞄に入れて階段を降りて、昇降口まで降りた瞬間、階段の裏側にある人目を少し避けることの出来る空間に押さえ込まれた。
九能先輩、ちょっと変かも知れないかな。
「す、すまない、少しだけだ」
「んッ…あの?…」
いきなり抱き締めてきた九能先輩に戸惑いつつ、私達の事を覗き見してドキドキしていたりワクワクしていたりする早乙女君とあかねさん達を肩越しに見る。
そういうのは止めた方がいいわね。
「切君、僕は気長に待つつもりはない。君達は残り四人を迎え撃ち、倒してしまえば良いと考えているようだが。それだけで済む話ではない」
「えと、じゃあ、どうするの?」
「決まっている。結婚だ。次の県大会で勝利した暁には親御さんに挨拶し、残りの不埒な許嫁らなどこの九能帯刀が破棄してやろう!」
高らかに宣言する九能先輩を見上げ、思わずクスクスと笑いながら「良いね、すごくカッコいい」と伝えて、ぎゅうっと抱き締め返す。
大きいから、手を回すのも大変だな。
「……ところで、いつまで覗く気かな?」
「やべっ、逃げろ!」
「早乙女乱馬、また貴様か!!」
「今回はあかねたちが主犯だ!」
「ええい!女の子に罪を擦るなど許せん!!」
「ちげえぇえっ!!!」
ドタバタと廊下を走っていく九能先輩と早乙女君を見送り、逃げなかったあかねさんとシャンプーと右京さんを見ると興味深そうに私の事を見つめている。
別に興味を持たれることしてないけど。
「
「早乙女君を落とす?」
シャンプーの質問に小首を傾げながら、あかねさんと右京さんを見ると同じことを聞きたいようだけど。私と九能先輩はいきなり知り合って付き合っている訳じゃないから、参考になるのかな。
「みんなって、私達の事どれくらい知ってる?」
「九能先輩が切さんに告白したのをOKしたのよね」
「うちはそこまで知らんけど。仲はええな」
「私も知らないね」
「まあ、話してないもんね」
そう納得しながら下駄箱で靴を履き替え、トントンと爪先を打ち付けてズレを直す。
「私と九能先輩って、幼なじみなんだよ」
「「「幼なじみ!?」」」
「うん。だから、いきなり告白されて恋人になったって言うより。ずっと昔に約束していた事を九能先輩が覚えていたし、思い出してくれたからかな」
指輪も2個貰ったし。
「確かに九能先輩って『よし、交際してあげよう』とは言っていたけど。好きや愛しているって、一回も言葉は使っていないわね」
そういう、けだから、カッコいいんだな。