「お婆ちゃん、こんにちは」
「来たぞ妖怪店主」
「よくぞ来てくれた。糸色殿」
「フフ、お婆ちゃんのお願いだからね」
そう言って猫飯店の席に九能先輩と一緒に着き、今回の呼び出しの要件を訊ねる。九能先輩も一緒にいるということは糸色家に関わることかな。
「うむ、今回呼んだ理由はこれじゃ」
ゴトゴトとテーブルに置かれたものを見る。
きのこ?
「松茸ではないが、芳醇な香りだ」
「その茸は傀儡芝と言うものでな。一度食べてしまえば消化するまで暗示に掛かるという毒キノコじゃ。お主らにお裾分けしてやろうと思ってな」
「何故、毒キノコのお裾分けを?」
「そうね。お婆ちゃん、乱馬に食わせるから私にもプレゼントするよろし」
「……シャンプー、それってムース?」
「愛する女の子の椅子になるとは剛毅な男だ。僕はお姫様抱っことキスしか許されていないというのに、全くけしからん」
語弊を生む言葉はやめてね?
しかし、暗示に掛けるとは言っていたけど。
どういう感じになるのかな?
「九能先輩、あーん」
「ムッ。一つ頂こう」
傀儡芝を食べた九能先輩はゴクンと喉を鳴らして飲み込んだものの。特に変わったところは無くて残念に思いつつ、私も食べてみる。
パチンと指を鳴らす音が聴こえると同時に私は九能先輩に抱き着いていた。
「…………あの、離してほしいかな」
「切君、この茸はすごいぞ!」
「く、九能先輩!?」
手と足を使って真正面から九能先輩に抱き着くという恥ずかしい事をしてしまっているのに、彼は革新的な物を手に入れたと言わんばかりに興奮している。
「あ、うごかせる」
九能先輩の頭を叩いて退治しておき、いきなり誰かに抱き着いてしまうのは大変だと悩む。別に九能先輩を抱き締めるのは問題ないけど。
他の人に抱き着くのは少しイヤだな。
「解毒剤とかない?」
「ない。昼に食べたなら夕飯まで効くかのう」
「七時間は、九能先輩の言いなり」
「切君が七時間も僕の言いなり?」
何故か私の胸を見つめてゴクリと喉を鳴らす九能先輩に不安を感じ、ささっと胸を守るように両手を使い、ジリジリとシャンプーとお婆ちゃんの後ろに移動する。
「所詮男は胸あるか」
「糸色殿は確かにデカいのう」
「え、エッチなのはダメなんだよ?」
そう言って九能先輩を見上げる。
「……フッ、この九能帯刀を侮るな。僕はこんな茸に頼らずとも切君を抱ける!」
「わ、笑い事じゃない!!」
高らかに宣言しながら九能先輩はパチンと指を鳴らし、私は条件反射で彼に抱き着いてしまい、彼の耳元で叫ぶも笑い声と指を鳴らす音で掻き消される。
うぅ、どうしたら?