1週間後の放課後。グラウンドを囲う土手の傾斜に座り、あかねさんや小鎌さん達と一緒に早乙女君と響君の真剣勝負を見守る前に、何故か早乙女君は響君に菓子パンを渡しているのが見えた。
先ずは英気を養えという武士の心意気だね。
そう感心する私から何故か気まずそうに顔を逸らすあかねさんに小首を傾げ、小鎌さんは状況を察しているらしく、少し呆れ気味に「ウチの弟があんなんだったら怒るわね」と呟く。
「無佐部無格闘ってあかねさんと早乙女君の動きは別物なのね。早乙女君、ずっと動いているし、間合いの外に出て攻撃を繰り返している」
「そうね。番傘来てるわよ」
グルグルと回転して地面を削る番傘を紙一重の間合いで躱し、地面に沈む番傘から距離を取り、私はスカートに付いた草や土汚れを払い、二人を連れて離れる。
多分、此方まで来るだろうし。
その予想通りにバンダナで手首を結び合った早乙女君と響君の二人は同時に土手に着地し、片腕のまま拳打の応酬を繰り返していたかに見えた刹那、番傘の柄を蹴って響君が早乙女君の胸元を切り裂く。
「あぁーっ!?この服気に入ってたのにっ!」
「勝負の最中に女みないなことをぬかすなっ!」
確かに、お気に入りの服が解れたり染みが出来たらショックを受けるものだけど。早乙女君はあかねさんに縫って繕って貰えるじゃないですか。
「誰が女ってぇーっ!!」
「おっと!へっ、何怒ってやがる!そんなものよりオレの受けた屈辱と絶望のほうが何千倍も苦しかったことを思い知らせてやる!!」
「しゃらくせぇっ!!」
私達の頭上を飛び越えて、フェンスを飛び越えて、忙しなく移動していく二人を追いかけていく人集りに私は苦笑を浮かべながら、フェンスに飛び乗って水飲み場へと蹴りを叩き込み、間欠泉の如く吹き上がる水柱を突き破り、響君に飛び蹴りを放つ早乙女君を見つめる。
やっぱり、女の子に変わった。
句君は小鎌さんもそうだと言っていたけど。彼女の場合は男の子になるのかしら?と小首を傾げながら、スカートの中を覗こうとする男子生徒を警戒する。
九能先輩はそんなにまじまじと見上げないで下さい。そういうことばかりしていたら、あかねさんや小鎌さんに嫌われちゃいますよ?
「九能先輩、退いてほしいかな」
「僕の胸に飛び込んできたまえ!」
「じゃあ、どうぞ」
フェンスを飛び降りて、スカートを押さえたまま両膝を突き出して九能先輩の胸に落下し、そのまま首を掴んだまま仰け反るように捻って着地する。
「タイガーマスクだ!タイガーマスクの技だ!」
「すげえ!」
……目立っちゃった。