「おー♪︎切ちゃん、どうしたんじゃ」
「お爺ちゃん…!」
「出たな、邪悪妖怪!」
九能先輩の斜めに切り下ろして振るう木刀を軽やかに避けたお爺ちゃんは私が抱えていた風呂敷を掴み、民家の屋根の上で風呂敷を解いた。
乾物と思って食べるかと思えば、お爺ちゃんは冷や汗を流しながら私と九能先輩の事を見下ろし、凄まじい眼光で睨み付けてきた。
「こ、これは傀儡芝!?なんと他者の心身を操る邪術の素材を持つとはどういうつもりじゃ!!」
「それは貰い物です!」
「何処の世に毒キノコを贈るヤツがおる!」
「猫飯店の妖怪婆に決まっておろう。今こそ邪悪よ、死ねいっ!」
「ヌウッ!?空圧を掌打で放つとは…!」
お爺ちゃんとお婆ちゃんの二人の戦いによって傀儡芝は弾け飛び、欠片や傘、茎の部分が行き交う人の口に入ったり、頭に落ちたりと大変な事態になってきた。
「死ね九能!!」
「日頃の恨みだ!」
「なっ、貴様らどういうつもりだ!!」
さっきまで遊んでいた風林館高校の生徒に驚き、私も加勢しようとした瞬間、パチンと指を鳴らす音が聞こえ、気がつけばソッチに抱き着いていた。
「…………響君、何してるんですか?」
「お、オレのセリフだあぁぁぁ!!!?」
ビックリしすぎて番傘を振り回してきた彼の手を弾き、後ろに飛び退いて九能先輩の肩を掴み、逆立ちのまま動かずに周囲を見渡す。
お爺ちゃんに盗まれた傀儡芝を取り返したいけど。ゆっくりと身体を捻って、地面に着地すると同時にまだ空を舞う傀儡芝を掴み、みんなの口に放つ。
「隣の人に抱き着いて」
そう言ってパチンと指を鳴らす。
「お、お前なにを!?」「オレじゃねえよ!」
「やめろ!」「いやじゃあ!?」「お前とくっ付く趣味はオレにはねえんだよ!」「ああ、これを使えば早乙女を倒せたのに」
ワチャワチャと大変なことになっているわね。
五寸釘君は騒動に乗じて九能先輩を殴ろうとしていたから許さないかな。七時間後まで仲良く男の子達とくっついていることをオススメするよ。
「……九能先輩は食べてないよ?」
「みんな抱き合っているぞ?」
そういう風に暗示を掛けているから、そうなっているだけかな。けど、お爺ちゃんとお婆ちゃんに飛ばした傀儡芝は弾かれた。
あの攻防の最中に周囲も見ている。
多分、制空圏の間合いが私とは桁外れなんだ。
私の制空圏は精々2m弱。対して、二人の制空圏の間合いは6mを越えている。武器の間合いを含めれば、その数倍は広くなる可能性だってあるわけだ。
格闘技は本当に奥深い。