みんな、無事に箱庭を脱出し、九能先輩の髪の毛は無事だったけれど。昔の様な坊主頭を見たくなかったかと言われるとウソになってしまう。
少なくとも私は見たかったかな。
そう思いながら冷や汗を流す九能先輩に近づき、彼の後ろ髪を掻き分けて、うっすらと見えた地図をノートに書き写すと男子更衣室が現れる。
別にそれは良いんだけどね。
「Oh!!Teacher達、生徒にヤシの実を奪われたら今年のボーナス全カットでぇす!!」
風林館高校の校長先生の恐ろしい強迫めいた言葉が聞こえた瞬間、体育館の出入り口に向かっていた男子生徒達は正確無比な打撃を顎先に受け、気を失う。
「みんな、家族のためだ。許してくれ」
「壬生先生だ!」「くそぉーっ!!」
クラスメートの男子が駆け出し、体育館を脱け出そうとした瞬間、ネクタイを巻き付けた左拳は稲妻の如く二人の身体を打った。
体育館の床に悉く倒れ伏す生徒達、壬生先生は強いとは思っていたけど。まさか左手一本に圧倒されるなんて予想すらしていなかったかな。
「糸色!九能先輩、オレと一緒に手数で押すぞ!!」
「……それはまあ別に構わないけど。私は三人に攻撃されたりしないわよね?」
あかねさんもシャンプーも右京さんも早乙女君が私の名前を出したことに物凄く不満そうに見つめている。九能先輩は男の人だから許されているのかな?
「我が最大の奥義をくれてやるわ!」
「じゃあ、私も奥義を使おうかな」
「ヘッ。なら早乙女流のとっておきだぜ!」
九能先輩は木刀を大上段に構え、私は左手を弓なりに引き絞るように構え、早乙女君は両腕を開いて以前見たことのある構えを其々が取った。
「蒼龍寺超秘奥義、暹氣龍魂ッ!!」
「糸色流仙術、収束爆砕…!」
「無差別格闘早乙女流、邪気隠滅拳っ!!」
青白い闘気の龍の真横を収束した拳圧は爆砕し、パンダにしか見えない闘気が壬生先生を貫き、ようやく勝てたと安堵したその時、私はお腹に向けて放たれたパンチを受け止め、スーツの背広を脱ぎ捨てた先生を見る。
「死ぬところだったよ、流石にね」
「僕の恋人に気安く触るな、きさま!」
そう言って九能先輩が前に出る。
やっぱり、かっこいいかな。
ドキドキしながら私は九能先輩を見つめていると句君が当たり前のように窓を開け、外に出ていき、その後ろを小鎌さんが着いていくところを見てしまった。
……そういえば窓もあったね。
ちょっと視野が狭くなっていたみたいだと反省しつつ、私達は壬生先生の隣をすり抜ける。