「あら、来たのね」
「魔女先輩!?」
「坊主のためだ。女だからって容赦しねえぞ!」
「乱馬っ、危ないね!」
我先にと飛び出した早乙女君の身体にロープを巻き付け、無理やり引き戻したシャンプーに感心しながら文句を言おうとする早乙女君の肩を叩き、魔女先輩の前にうっすらと見える壁を槍で突く。
「なッ、ガラスか?」
「ウフフ、強化ガラスみたいなものよ。校庭の砂って踏み締めるから固くなっているのかしらね」
「どうして、邪魔するんですか!?」
「そうやでっ、先輩もおかっぱやで!?」
あかねさんと右京さんがそう詰め寄るも魔女先輩は楽しそうに笑っているだけで、何かを言わずに自分自身の綺麗な髪を触っている。
「ウフフ、あのおかっぱの話だけどね。三年生は適応外なのよ。いきなり言われても何でか分からないわよね、答えはもうすぐ卒業式だからよ♪︎」
晴れ舞台におかっぱと坊主頭は確かにダメかな。でも九能先輩の坊主頭は見たいと言われれば物凄く見たいと素直に言える。
「分厚さは大体30cmぐらいかな?」
「あら、貫ける?」
「まあ、ガラスなら余裕かな」
ヘアピンを取り出して、ツンと押した瞬間にガラスは粉々に砕ける。
「プリッツフォン・ポイント…!」
「ぷ、ぷり?」
「万物には必ず存在する分子集合体の凝集力の弱い箇所を打つ技術かな。中国拳法で言えば───」
「
私の言葉を補足してくれたシャンプーにお礼を言いつつ、魔女先輩を見つめると彼女はクスクスと笑って、私に道を譲ってくれた。
多分、私の困った反応を見たかったんだろうけど。
流石にタイミングが悪いかな。そう思いながら男子更衣室を早乙女君達に探して貰いつつ、私は魔女先輩の隣に移動してのんびりとお話をする。
「ウフフ、本当に面白いわよね」
「そうかな?」
「えぇ、切ちゃんは本当に面白いわ♪︎」
「……馬鹿にしてる?」
そう言いながら私は小首を傾げる。
ついでに魔女先輩が弄ろうとしている携帯電話を取り、なんでこの小さな道具を「携帯電話」だと思っているのかと自分自身に悩む。
「ウフフ、可愛いわね」
「?なぜ、いきなり賛美を?」
よしよしと私の頭を撫でて楽しそうに笑う魔女先輩に携帯電話を返し、アタリと書かれた紙を持った早乙女君が校長先生に髪型自由を突きつける。
まあ、私の癖毛もおかっぱにならなくて良かったかな。九能先輩もこの髪の毛は可愛いって褒めてくれたから切りたくなかったんだよね。