切ちゃんは少し変わっている。
オレと姉ちゃんも人の事をとやかく言えるほど優れた人間じゃないが、少なくともオレと姉ちゃんの将来仕える予定の切ちゃんには言える。
まず切ちゃんの自己肯定感の低さだ。
姉ちゃんと切ちゃんは風林館高校の可愛いランキングと美人ランキングに二人揃ってランクインしているし。美人ランキングでは、なびき先輩と並んでの1位だ。
「なびき先輩、好きだ」
「はいはい。聞き飽きてるわよ」
そう言ってオレを軽くあしらい、階段を上がる彼女の耳は少し赤くなっているのをオレは見逃さない。何故か?切ちゃん曰く「好きなら素直に伝えること」こそが、とても重要らしい。
……まあ、オレの告白は卒業するまでだ。
逃がすつもりも離すつもりもない。
乱馬と義理の義理の兄弟になるのは面倒だが、オレと互角に渡り合える相手がいるのは嬉しく思う反面、まだまだ強くなれることを理解できる。
「どう思う。切ちゃん」
「え?……句君はいつも主語がないかな?」
「そうか?そうなのか、気を付ける」
「フフ、良いんだよ」
くいっと背伸びをしてオレの頭を撫でようとする切ちゃんに頭を下げる。糸色家の血筋は、特に女の人は何故か人の頭を撫でることが多い。
姉ちゃんもそうだ。
文句は不満を言いまくるし、オレの事を愚弟と罵るが、良いことをすると切ちゃんと同じでオレの頭をよく撫でてくれる。
「よっす!
「……乱馬、ホームルームまで後僅かだ。オレの宿題を手伝ってくれ」
「すまん。パスだ」
「クッ…!」
親友だろう、助けてくれ。
そう文句を言いながらオレの隣の席に座っている五寸釘を見る。が、あからさまに視線を逸らしやがった。ひろしと大介ならと見る。
コイツらもダメだったか……。
「切ちゃん、頼みがある」
「?なにかな」
「宿題手伝ってくれ」
「…………はあ、見るだけだよ?あと帰りにお野菜買うから荷物持ちお願いできる?」
「助かる」
オレの言葉に苦笑いを浮かべながら、切ちゃんは素早く宿題を終わらせていく。しかし、ある問題に気付いてしまった。切ちゃんの文字は綺麗すぎる。
これはオレの文字じゃない。壬生に手伝って貰っていたことがバレる。が、やっぱり切ちゃんはとても変わっている。
彼女は誰彼に優しすぎるのだ。その優しさに甘えているオレが言うのもあれだな。兎に角、切ちゃんは人に優しすぎる。
「ありがとう、切ちゃん」
「はい。もう終わったかな」
早いぜ、切ちゃん。
いや、姉ちゃんもこんぐらいだったか?二人とも次期当主と当主候補だからな。