胸を強打して気を失った九能先輩の頭にスカーフで枕を作ってあげ、日焼け避けにハンカチを額に乗せて早乙女君と響君の勝負を見るために向かう。
「(早乙女君、やっぱり女の子になってる)」
「うそ、私と同じ?」
ようやく追い付いたときに小さく呟く小鎌さんの言葉が聞こえ、句君の言っていた事を思い出す。つまり、彼女は水を被ったら男の子に変身する!
ちょっとだけ見てみたいと思いつつ、胸を隠しながら戦う早乙女君の背後にあかねさんが見え、まさか助っ人を?と考えるも胸の事を注意する様だ。
「句君、見すぎだよ」
「ムッ。すまない」
「女の子はそういうの恥ずかしいんだからね?」
そう早乙女君の胸を見ていた句君に注意していたその時、バサリと音が聴こえて、そちらに視線を向けるとあかねさんの綺麗な髪の毛が切り落とされていた。
なんで?と戸惑う私に「響良牙の投げたバンダナが斬ったんだよ」と句君は教えてくれたけど。なんて声を掛ければ良いのかが分からない。
小鎌さんは放心する彼女に寄り添い、ふらつき、ぼんやりとしているあかねさんと一緒に早乙女君と響君の二人に思いっきりビンタやパンチを叩きつける。
「私も行ってくる」
「追い打ちはかわいそ……いや、妥当だな」
何を勘違いしているのか知らないけど。
私が行くのはあかねさんの傍だよ。大事な髪をあんな風に切られたら、誰だって悲しいの。……男の子にはちょっと分からないかな?
「あかねさん、大丈夫?」
「うん」
「……小鎌さん、これ、どう?」
「ちょっと放心しているわね。とりあえず、私が送るから切さんもあのバカ共がしっかりとあかねさんに謝るまで許しちゃ駄目よ?」
その言葉に頷きながらも句君にお説教を受け、こんこんと何がダメだったのかを話し合っている。いえ、そういうこともあるのだろう。
「あかね君、僕が気を失っていなければ…」
九能先輩も後悔を募らせるように呟き、会って数日だけど。やるせなさに手を出して、引き戻す事を繰り返す彼の事を見つめる。
損得抜きに悲しさを感じる。
ゆっくりと足を止めて、私は何も言葉を掛けることが出来ず、ただただ離れていく彼女の背中を見送ることしか出来ない。お友達になってくれたのに、何も返せない。
「(結局、何の力も持っていない私では当主にもお友達の悲しみも拭ってあげることもできない。悔しくて、悲しい気持ちばかり……)」
どうしたら、喜んでくれるかな。
「いっそのこと、もう刈るか?」
「よし、僕も手伝おう!憎き早乙女乱馬の髪を刈り取ってあかね君に捧げるのだ!!」
いや、それは普通に邪魔じゃないですか?