「その槍、如意棍槍だな?」
「……知っているのかな?」
穂先を噛み砕かれた槍を縮めて、スカートの中に仕舞って家宝を取り出して構えた瞬間、ニヤリと猩々は笑みを深め、エフエフと変わった笑い声を発する。
それだけじゃない。
「大人の怖さを教えてやろう」
猩々は金棒を捨てると両腕を開いたように構え、凄まじい気迫に足が後ろに下がり、身の毛が逆立つ。強い。いや、強すぎるんだ。
こんなに強いと思う相手は妙様以来だ。
「フフ、負けないかな。私は糸色切だよ!」
そう私は宣言すると同時に槍を真っ直ぐ何百発と繰り出し、石突きで脇腹を薙ぎ、猩々の喉を突く。当たる。当たっているのに彼は無防備に、優雅に、力任せで豪快に両腕を振り下ろした。
勝ったと油断する顔に右拳を当て、二重の極みを撃ち込んで強引に叩き伏せる。カウンターで二重の極みを極めた。普通は立てない筈だ。
立てない筈なんだけどな。
「あっ、ぐっ、ふう、顎が折れ掛けたぜ」
「うわあ……」
ゴキゴキと顎の骨を鳴らして固定を直す猩々にかなり引きつつ、私は手放していた槍を蹴って手元に構える。けど、そろそろ酔い止め薬の効果が切れる。
そうなったら吐くかも知れない。
いや、多分、絶対に吐くかな。
「テメー、よくも姉ちゃんを殴りやがったな」
「あのクソ男が、よくも顔殴ったわね」
制服の上着を脱ぎ捨てた句君は両腕に分銅の鎖を巻き付け、小鎌さんも九能先輩に返して貰った大鎖鎌を担ぎ、怒り心頭の顔で猩々を睨み付ける。
「良い闘気だ。来い!」
「「ブッ殺す!!」」
「殺すのは無しかな!」
そう言うと同時に駆け出す本条姉弟の間をすり抜け、真っ先に猩々の鳩尾に石突きをめり込ませる。いくら硬功夫を鍛えていようと鳩尾を突けば動きは止まる。
「─────ゼロ距離、八寸!!」
「ぐぶお゛っ!?」
「本条流大鎖鎌術、乱弁天!!」
槍を瞬時に左右に捻り込み、鳩尾にダメージを与える。その僅かに体勢を崩したところに大鎖鎌の打撃と斬撃の暴風が彼の身体を弾き上げる。
「本条流鎖分銅術、弁天結び…!」
句君が空を舞う猩々の身体に鎖を巻き付け、両足を顎の下に叩きつけながら宝船に彼を突き刺した。プロレスでいえばパイルドライバーに蹴りの体重を加えた技だ。
「フン。死んどけ、クソ男が!」
「安心しろ。峰打ちだ」
「蹴りに峰打ち?」
私は困惑しながらも残りの八福道人を見る。
此方の方が数で優勢かな。そんなことを考えていた次の瞬間、宝船が傾き始め、グラグラと左右に揺さぶりを開始し始める。
「うぷっ、うづぅ…!」
「切ちゃん!?」
ま、まずいっ、吐くかも…!