輸送機の到着を待たず、シャッキー・チェン様に送って貰えたのは幸運だったかな。そう思いながらも激気を使いすぎて、動くに動けない。
「……九能先輩、抱っこして」
「うむ、任せろ!」
私の我が儘を嫌な顔を欠片も出さず、お姫様抱っこしてくれる彼の優しさに甘えつつ、寝崑崙に聳え立つ八福道人の塔を見上げる。
キリンと呼ばれる長を除いて、八人の相手が居る。早乙女君達は先に来ているだろうけど。あの不安定な足場に居たから、疲労も溜まっている筈だ。
ドタバタと走り出す大人達を追いかけ、方向転換していく響君の事を句君に頼み、私は少しでも力を回復するために呼気を繰り返す。
丹田に意識を集中する。
下、中、上、と一番下から上に向かって力を溜めるように気力を練り上げる。まだ気功法の技術は拙くコントロールも下手すぎるため、練った気は練った半分近くが外に出ていってしまう。
そんなことを続けていると、激戦の後が続いている。早乙女君が先に戦っていたのは予想していたけど。まさか、この山を登る関所をひとりだけで?
まあ、それだけあかねさんが大事なんだろうね。
「よう。待ってたぜ」
「貴様は切君達に負けたサル!」
「サルじゃねえよ、俺は猩々だ」
そう言うと猩々は他の人には目もくれず、私だけを見据えている。私だけを指名しているということかな。九能先輩の腕の中に居たい気持ちを我慢して、地面に降りると九能先輩達に「先に行っていて」と目配せをする。
「良いね。タイマンだ」
「まあ、そうなるかな」
槍はもう手元にはない。
私の破傀拳が、通じると良いんだけど。
「蟷螂拳か?」
「違う、よッ!!」
素早く前進すると同時に猩々の繰り出してきたパンチに合わせて、竜頭拳を手首に撃ち込み、手首と膝を蹴って両肩の関節を人差し指と中指で突き刺す。
「まんま関節破壊の技だな。だが、俺とお前の筋力差を考えろ。この分厚い筋肉を貫けるか?」
「フフ、確かにこのままじゃ貫けないかな」
イメージを固める。
蛇のように、絡め殺す。
「破傀拳奥義」
──────〝四面楚歌〟
「こいつ、超神速の動きを!?フハッ、そうか!イトシキ、糸色ってお前の事だったなァ……!
猩々私の動きを追わず、両腕を広げ、ズッシリと腰を沈めて構える。超神速の身のこなし。しとりお婆様の夫・緋村剣路様の体得していた飛天御剣流の動きを、少なくとも私は使える。
更に、私は舞神法も使える。
────
「破傀拳…!」
四方八方。前後左右。動き回る私の後を追う目を避けず、真っ正面に移動し、小刻みに左右に身体を揺さぶって両手の人差し指に力を込める。
「獲ったァ!!」
「広背掌」
両手を重ねた合掌の構えで繰り出された突きをスライディングで回避し、膝関節と股関節を貫き、両肩を貫き、倒れてきた猩々を抱き絞め、螺旋状に両手を捻り込み、背筋の筋肉繊維を緩め結ぶ。
「船の上じゃなければ私は負けないかなあ?」
そう言って猩々を地面に寝かせる。
「暫くすれば動けるようになると思うけど。あんまり無茶したら関節が歪むからね?」
「クカッ……マジで惚れそうだぜ……」
「えうあ!?……コホン、私はお付き合いしている人がいるからお断りします」
彼の告白に頭を下げて、お断りする。
いきなりすぎて、吃驚仰天しちゃった。