「火中天津甘栗拳っ!!」
「その技は既に見切っておるわ!」
キリンの宣言する通り、早乙女君の音速に到達する火中天津甘栗拳は完全に見切られ、キリンの身体に当たる寸前に菜箸の様に長いお箸に阻まれる。
拳打の破壊力で言えば早乙女君は勝る。
しかし、無差別格闘早乙女流の技の数々は立地や状況を組み込んだ環境利用闘法とも言え、付け加えると気功法の運用は必要不可欠だ。
この噴き出す温水も渾身の一撃をキリンが避けた影響だろうし。このまま戦って勝つにしても早乙女君には、あの絶対的な防御を越える技は無い。
「ハッピー、このままではジリ貧じゃぞ」
「安心せい。乱馬の身体には鬼ごっこを利用して型は染み込ませておる、あとはコロンちゃんの教えた氷の心を思い出す事が出来れば…」
「乱馬、冷静さを思い出せ!」「ハッピーが乱馬の身体に型を染み込ませたと言ってるね!」「奥義の類いじゃ!乱馬、見極めるだぁ!」「乱ちゃん、お好み焼きと同じや!じっくりと集中するんや!」
響君、シャンプー、ムース、右京さんの四人が早乙女君に声援を送る最中、句君と小鎌さんは私の上がってきた階段を見つめている。
「冷静さってお前ら……いや、やってやるよ」
緩やかに構えを解いた早乙女君に無数の刺し箸が放たれる。しかし、冷静さを心掛けることで偶然生じた脱力によるリラックスでお箸を使う左手の巻き起こす風圧を利用して攻撃を回避する。
「チェリャアッ!!」
「なっ、ぐおおおおおおっ!!?」
早乙女君がリラックスしたまま放ったパンチはしっかりとキリンの顔に命中したものの、彼を倒しきるには至っていない。むしろ警戒心を高めてしまっている。
「余の顔に触れるとは…!」
「けっ。何百発だって当ててやらァ!」
「
「速えぇ!?」
真っ直ぐ早乙女君の身体をお箸が突き刺す。
言わば直箸に類する攻撃だ。お鍋だと欲しい食材を探り、他の人のお玉や取り箸を使わず、直接自分の使っていたお箸をお鍋やお皿に指す行為────。
「乱馬、意識を静めねば勝てぬ相手だぞ」
「乱馬君、落ち着きなさい。一点を見据えるのだ」
ついに早乙女玄馬と天道早雲もアドバイスを送り始める。確かに早乙女君よりもキリンは強い。しかし、冷静になれば倒せない相手じゃない。
「気は満ちておる」
「左様。撃てば必勝の技じゃ」
お爺ちゃんとお婆ちゃんの二人は何かを期待するように早乙女君の背中を見つめている。ライチさんもあかねさんも真剣に戦いを見守っている。
決めるのは、次かな。