つまり、切ちゃんのパパと会う。
で、九能先輩は十年ぶりの顔合わせ。しかも糸逢家の一人娘・切ちゃんとお付き合いしているわけ。認めてくれるかどうかは九能先輩次第なのだ
渋々と電話を使ってお父さんに連絡して迎えに来て貰うことになり、私達はお父さんの指定した青海省の中華料理店に集まる。
「ひいお婆ちゃんの猫飯店の本店ね」
「ワシの店を選ぶとはやりおる」
そう言って元祖猫飯店の看板を掲げた中華料理に入るとお茶を飲んでいるスーツ姿の人達と、お店の中を一望できる二階の席に腰掛ける壮年の男性───糸逢家の現当主であり、糸色家の全分家の仕立てを担う
「お久しぶりです。お父さん」
ゆっくりと二階に居るお父さんにお辞儀をする。しかし、言葉は返って来ず、私を見る目は真剣さを帯びている。多分、この身体に宿る『鍵』を按じている。
「この力は使っていません」
「変に肩肘を張るな。そう容易く禁を破る子に育て上げた覚えは無い。が、糸益の小僧と戟號の二人を返り討ちにしたそうだな」
「はい。私は、九能先輩とお付き合いしています」
「九能?あのハワイかぶれの息子か」
「ムッ。確かにダディはハワイかぶれだが、僕は切君に相応しく在ろうと日々努力している。それよりも実の娘に変態や野蛮人を押し付けるとはどういう了見だ!」
「アレは必要な事だ。他の分家と違って糸逢家は安易に人を信頼する事は出来ない」
そう言うと食事の手を止めたお父さんは席を立ったと思った次の瞬間、私の目の前に佇んでいた。舞神法。お父さんに学んだ技術は、未だに貴方に届かない。
「僕の恋人だ。無理強いは許さない」
「私は父親だ。お前の言葉は不要だ」
「お父さん、残りの許嫁を教えて下さい。誰の手も借りずに倒します」
九能先輩の手を握ったまま、そう告げると「日本に帰ったら休日を利用して一度帰ってこい。大人数に聞かせる話の内容ではない」と言い返された。
だけど。お父さんらしいといえばお父さんらしい。
「飛行機は手配してやる。そして、早雲と玄馬は私に借りた金を返せ」
「くっ、私は屈しないぞ!」
「元はといえばお師匠様の借金だ!」
そんなことを言いながら抵抗する早乙女玄馬と天道早雲の二人を引き摺っていくお父さんは徐に私に振り返ったかと思えば目を閉じた。
…………そういえば、高校生になってからまだ会っていなかった事を思い出した。会いに行かなかったからお父さんは怒っているのかな。
「お前のオヤジ、怖すぎだろ」
「そうかな?普通だよ、さっきも『糸逢家は色々と抱えているから簡単に人を信じるな』って」
「言ってなかったわよ?」
お父さんは口下手なりに言ってたよ?