ハアハアと呼吸を荒くして私の事を追いかけるライム君の猛攻を避け続ける途中、女の子に変わっていた早乙女君を見つけ、ライム君を押し付ける。
悲鳴も聞こえるけど、頑張ってね。
「遅刻しなくて良かったかな」
そう呟きながら剣道部を率いて走り込みを行っている九能先輩を見つける。もうすぐ三年生になるなら、後任を探しているんだっけ?
ゆっくりと上履きに履き替えていたとき、甲高い早乙女君の悲鳴になんだ何だと、みんなの視線は校庭に向く最中、そそくさと教室に向かう。
私は無関係だよ。無関係、うん。
そう自己肯定を繰り返して、教室に入るとクラスメート達は窓際に集まり、ワイワイと早乙女君に起こっている悲惨な出来事を見下ろしている。
「おはよう、切さん」
「おはよう、あかねさん。何かあったの?」
「乱馬が変態に襲われてるのよ」
「いつものことかな」
「ひ、否定できない!」
ちょっとショックを受けるあかねさんに思わず、クスクスと笑ってしまうけど。やっぱり止めてあげるべきかな?と悩む。
「糸色、てんめえぇぇーーー!!」
「えいっ」
窓をよじ登ってきた早乙女君は怒り心頭のまま私の事を呼ぶため、トンと押して窓の外に押し出すと待ち構えていたライム君の腕の中に収まった。
「切さん、説明してほしいんやけどどぉ?」
「そうね!教えるよろし!」
ずずいっと迫ってきたシャンプーと右京さんの言いたいことはすごく分かる。あまり分かりたくないところも、そこそこあるけど。
ゆっくりと溜め息を吐いて、質問に応える。
「彼はライム君、私の許嫁にされた一人かな。見て分かると思うけど、女の子がとっても大好きだから、小鎌さんも避難しているのよね」
チラリと校庭を見下ろす。
必死に逃げる早乙女君、それを追うライム君。
「ウチらは手出せへんわけやな?」
「困るね、あかね代わりになるある」
「なんでよ!?」
「これも乱ちゃんのためや」
三人の姦しい会話を聞いていたとき、壬生先生が早乙女君とライム君の間に割り込み、左拳のアッパーカットを繰り出した次の瞬間、凄まじい竜巻を生み出した。
しかし、それは数日前に早乙女君の放った奥義よりも簡易的且つコンパクトに威力を押さえているようにも見えた。まさか、わざと破壊力を消している?
「「「飛竜昇天破!?」」」
「やっぱり、壬生先生って実力を隠しているよね」
そう呟きながら壬生先生に飛び付いて、技の事を聞き出そうとする早乙女君にクスリと笑ったものの。私の背後に立つ嫉妬心を顕にする三人に苦笑いを浮かべる。