健康レジャーランドでのデートも楽しかったけど。何か視線を感じることがまた増えた。ライム君はちゃんとお話しして悪いことしないように伝えたけど。
四人目の許嫁かな?と思いながら通学路を歩いていると早乙女君が九能先輩の軽く叩くような一刀で倒れた。今の一撃はかなり手加減していたはずだ。
その驚愕の光景に思わず、私は足を止めた。
九能先輩の実力は知っているけど。まさか早乙女君を簡単に倒せるほど強くなっているなんて、私は全く気付きすらしていなかった。
「うぐっ、ど、どうなってんだ?」
「早乙女乱馬、さては風邪だな!?普段の貴様ならば容易く避ける事の出来た一撃の筈だ。格闘家たる者、体調管理ぐらいしておけ!」
「オレは風邪なんぞ引いてねえ!」
ドゴッ…!といつもなら聴こえる打撃音は聴こえず、九能先輩も困惑と驚愕に顔色を変えて、自分の身体を触って確かめている。
「どうなっている?お前の拳を受けて痛みを感じないなど有り得んはずだろう!?」
「どうしちゃったのよ、乱馬!?」
「わ、分からねえ…いつもと同じように殴った筈なのに力が入らねえんだよ」
あかねさんも、違和感に気付き始める。
「早乙女君、少し身体に触るわよ?」
「うおっ、いつの間に来たんだ!?」
「ムッ。おはよう、切君」
「おはようございます、九能先輩」
そう九能先輩と挨拶を交わしながら早乙女君の肩や背中を触る。やっぱり、気血の流れを何かで遮断している。それもかなり強力な力で塞き止めた状態になっているせいで、早乙女君は本来の力を使えないんだ。
「切ちゅわあぁんっ!!ワシと一緒に楽しいことをしたいとは本当かああああっ!!」
「爺ッ!!」
「出たな、邪悪妖怪!」
「邪魔じゃい、小童どもめが!!」
木刀を振るう九能先輩の顎を蹴り、殴りかかった早乙女君の手首にキセルを引っ掛け、川に投げ飛ばすお爺ちゃんの言葉に戸惑いながらも後ろに飛び退いた、そのときだった。
ドンと何かに背中をぶつける。
「熱ッ…!?」
ジュクジュクッと熱を持った何かを背中に当てられた痛みに声を上げた瞬間、ガクンと力が抜け落ちた。さっきまで把握していた周囲の気配も消えた。
「気血を、断たれた?」
「切さん!?」
「悪いな。コイツも仕事だ」
そう言うと瞬く間に消えてしまった。
コウモリの空間把握能力を利用した「響響拳」の力が使えない。音を上手く拾えず、空間を把握することも出来ない。
「…あ、あかねさん、私も弱くなっちゃった」
「そんなッ、今許嫁候補が来たら…!」
さっきの男、仕事だって言っていた。
つまり、「残り三人の許嫁」の誰かに雇われたヤツが仕掛けた罠ということになる。
「やい!八宝斎、糸色に手を出す……どうしたんだよ?おい、固まってやがる」
「……景殿、くっ…!」
けいどの。景、どの。
糸色景様の名前を呟いて、お爺ちゃんも消えた。