ザアザアと雨の降る中、買い物袋を持ちながら傘を差して歩いていると響君を見つけた。なんだか凄く辛そうにしている彼の目の前にしゃがみ、小鎌さんと一緒に彼の事を見つめる。
濡れないように身体を傘で守る彼に違和感を抱き、小鎌さんと早乙女君と同じなのかな?と思いつつ、しっかりと傘を固定してあげる。
「……うっ、おまえは?」
「こんにちは、響君」
「アンタ、また迷ったのね」
そう呆れる小鎌さんに代わって「方向音痴は仕方ないよね?」と響君の事を励まし、私と小鎌さんは立ち上がると「グウゥゥゥ…!」と唸るような音が聞こえた。
行き倒れかと思ったけど。まさか本当に何も食べずに行き倒れていたのね。極度の方向音痴、極まれば凄く危険な事なのかも知れない。
「……お家来る?」
「切さん、相手は男なのよ?分かってる?」
「えっ、まさか響君も女の子に!?」
「そういうことじゃないわよ。……はあ、句がいるから大丈夫だろうけど。切さんに不埒な真似をしたら許さないからね?」
小鎌さんはそう言うと傘を差したまま動かない響君の襟首を掴み、ズルズルと引きずり始める。雨だから服が濡れちゃうのに良いのかな?
私は買い物袋を持って私のお父さん、小鎌さんと句君のお父さんの選んだマンションの一室に入ると、ダンベルを足首に括り付けた句君が懸垂を繰り返していた。
……すごく、汗臭いてイヤです。
「ん?なんだ、帰ってきたのか」
「句、あんたねぇ…!切さんは私達の仕える糸色家の女の子なのよ、そんなゴツい筋肉見せたらビックリしちゃうでしょうが!!あと汗臭い!」
「切ちゃんは友達で良いらしいぞ」
「少しはッ、配慮しなさい!」
仲良し姉弟、羨ましい。
「はあ、もういいわ。句、このバカをお風呂に押し込んでおいて貰える?私は玄関の水と服を洗濯しておくから、切さんは夕御飯の準備をお願い」
「……どっかで見た顔だな」
もう忘れたの?と少しビックリしながら句君の態度に驚いていたとき、水しぶきを浴びた小鎌さんの姿が変わった。ワンピースが筋肉で盛り上がり、スカートは上がり、ワンピースのボタンが四つも弾けた。
「………………」
「素敵な前鋸筋と僧帽筋ね」
「変な慰めなど要らぬぅ!!」
ズゥーンと落ち込むマッチョな筋肉お兄さんになってしまった小鎌さんの頭を抱き締めて、よしよしと優しく頭を撫でてあげる。
「だから相手は男ぉ!」
「小鎌さんはお友達だもん。違うよ?」
「……人誑しの糸色めぇ!」
そんなこと言われたの、初めてですが?